お笑い芸人のバカリズムが司会を務める深夜の音楽番組「バズリズム」。その番組によるライブイベントが「バズリズム LIVE」であり、今回で5回目の開催。
昨年までは割とジャンルごった煮の異種格闘技的なイベントのイメージだったが、2daysのうちの初日であるこの日は
[ALEXANDROS]
神様、僕は気づいてしまった
SUPER BEAVER
Fear, and Loathing in Las Vegas
マカロニえんぴつ
という交わりそうでいてなかなか他のイベントなどでは交わらないようなロックバンドたちが集結。
場内には番組のセットが設営されており、そこで写真撮影するためにたくさんの人が並んでいる中、開演前には日テレ系列の番組ということで日テレの番宣の映像も流れている。
開演前にはバカリズムと日テレアナウンサーが登場して開会宣言。
「みんな、今日何を食べてきましたかー!…凄いですね、みんな崎陽軒だって。さすが横浜(笑)」
と笑わせる中、最初のアーティストへ。
・神様、僕は気づいてしまった
開演前からステージを囲んでいた紗幕の存在によって、トップバッターがこのバンドであるということが察せられる、神様、僕は気づいてしまった。
壮大なSEが鳴ると同時にビッグバンを思わせるような小宇宙的な映像が紗幕に映し出されて、メンバーがステージに現れる。紗幕に映像が映し出されていてもハッキリわかるくらいに真っ白な衣装に身を包んでおり、顔はアー写の通りに人外的な存在。しかもそれぞれが違う形状をしている。
長めのSEと映像が終わると、東野へいと(ギター)がギターを掻き鳴らす、今年リリースの新作「20XX」の1曲目である「オーバータイムオーバーラン」からスタートし、紗幕には人間の負の感情を歌詞にした強いフレーズの一つ一つが順番に紗幕に映し出されていく。どこのだれか(ボーカル&ギター)による、シーン登場時は「子供なんじゃないか?」とすら言われていた、おそらく声変わりをしていないくらいにハイトーンなボーカルも被り物越し、紗幕越しでありながらも実にしっかりと響いている。
しかし映像や歌詞などが映し出されるが故に、ついつい紗幕に見入ってしまいがちなのだが、その奥で音を鳴らすメンバーたちは実にアグレッシブに演奏している。東野はサビ前に入るキメ部分でギターを抱えて高くジャンプしてみせたり、和泉りゅーしん(ベース)は激しくステージを動きながらも重いベースラインでバンドを支え、蓮(ドラム)は時折スティックをくるくると回しながら視界が普通のドラマーよりもはるかに狭い(目の周りくらいは空いている)とは思えないくらいの手数の多さを見せる。紗幕に映像が映るから淡々と演奏していればいい、というような甘えは一切ない。自分たちの音と言葉に最大限の意志を込めて演奏しているのがわかる。
どこのだれかがハンドマイクで紗幕の目の前まで出て行って歌う「わたしの命を抉ってみせて」を終えると、紗幕にはどこか怪しげな外国人男性のスピーチのような映像が映し出されてから曲のタイトルが映し出されたのは「Troll Inc.」。最新作「20XX」収録の曲であるが、紗幕に映し出された猥雑とした繁華街の映像はどことなく異国情緒の強い横浜の街とよく似合っているし、1stアルバムではひたすらに疾走感を感じさせるようなサウンドだったこのバンドがブラックミュージックのエッセンスを取り込んだ変化球的な曲。横浜の街を夜に歩きながら聴きたくなる。
基本的にMC一切なし、曲間もほとんどないというスタイルであるがゆえに実にテンポが良いし、他の出演者に比べるとライブの本数自体はそこまで多くはないバンドであるが、自分たちのライブの戦い方、ひたすらに曲を演奏し続けるというスタイルは完全に完成している。
だからこそ「だから僕は不幸に縋っていました」からの曲ではより一層疾走感を感じさせるし、「僕の手に触れるな」の激しいサウンドは歌詞に強く含まれた憎悪の気持ちをさらにブーストしていくかのよう。
メロディのポップさも感じさせる「メルシー」にしても、やはり目立つのはバンドのグルーヴとそれを構成するためのメンバーの演奏力の高さ。見た目だけを見たら完全に色モノバンドの枠に入ってしまいそうであるが、きっと演出や設定などなしでもただただライブの力だけで勝てるバンドである。
「次で最後の曲です。ありがとうございました」
とどこのだれかが言ってから演奏されたのはこのバンドのシーンへの登場を高らかに鳴らした「CQCQ」。レーザー光線も飛び交い、蓮の高速4つ打ちのドラムが歌詞によるダークさやネガティブさを光溢れものに変換していく。最後にキメを打った後にスティックを高く放り投げた蓮の姿を見て、少なくともこの人はいきなり出てきた新人バンドという人ではないのではないか、とすら感じていた。それくらいにあまりに演奏が凄すぎる。
ライブで紗幕を使うアーティストと言えばamazarashiがすぐに浮かぶし、被り物をしているバンドと言えばMAN WITH A MISSIONがすぐに浮かぶ。つまりこのバンドの手法自体は決して新しいものではないけれど、amazarashiもMAN WITH A MISSIONもギミックだけでなくライブそのものが素晴らしいアーティストである。そしてやはりこのバンドもそういうアーティストだった。初めてライブを見たのだが完全に想像を上回っていた。
強いていうならばてっきりやるだろうと思っていた「ストレイシープ」をライブで、聴きたいんだよ僕は。
1.オーバータイムオーバーラン
2.UNHAPPY CLUB
3.わたしの命を抉ってみせて
4.Troll Inc.
5.だから僕は不幸に縋っていました
6.僕の手に触れるな
7.メルシー
8.CQCQ
・マカロニえんぴつ
先日は横浜Bay Hallでもライブを見た、マカロニえんぴつ。今回は同じ横浜でもアリーナ。神奈川出身のバンドであるが、初めての横浜アリーナでのライブである。
神様、僕は気づいてしまったのライブが終わったことによって紗幕が取り払われ、全貌が明らかになったステージにメンバーが登場すると、田辺由明(ギター)と長谷川大喜(キーボード)は初めて見るこの景色をしっかり記憶するかのように眺めると、はっとり(ボーカル&ギター)がギターを鳴らしながら歌い始めたのは「青春と一瞬」。はっとりのその弾き語り的な歌い出しからバンドサウンドへと転換されていくのだが、マクドナルドのCM曲としてこのバンドの存在を広く知らしめたこの曲も、フェスやイベントなどでは定番という曲ではない。(Bay Hallの時もやらなかった)
そんな曲で始まったというのがこの日の、バンドにとって初の横浜アリーナでのライブであるという意気込みを感じさせるのだが、
「いつでも僕らに時間が少し足りないのは
青春と一瞬がセットだから」
というのはマクドナルドのタイアップということに寄せながらも、マクドナルドで放課後にダベっているような時間が過ぎ去った者としての青春の切り取り方として本当に素晴らしい名フレーズである。
ステージがタイトル通りに黄色い照明に照らされながら、どこか暖かい空気が漂う「レモンパイ」では客席からたくさんの腕が上がる。みんなこのバンドの存在と楽曲をしっかり知っているし、はっとりのボーカルは実に堂々と響いている。むしろBay Hallの時のGRAPEVINEとの対バンの時の方が緊張していたような。
「2019年のバズりそうランキング10位に選出されました、マカロニえんぴつです。初めての横浜アリーナでのライブです。初めて見る方も多いと思いますが、マカロニえんぴつの美味しいところだけを凝縮したグッドミュージックを届けたいと思います!」
とはっとりが挨拶すると、もはやイントロのギターの音だけでも切なくなる「ミスター・ブルースカイ」ではメンバー背面の4面に分かれたLEDにタイトル通りに青空の映像と、サビでは歌詞が映し出されて切なさを倍増させていく。
R&Bの要素を取り入れながらもマカロニえんぴつなりのポップさは全く変わらない「ブルーベリー・ナイツ」でも同様にLEDにブルーベリー的な色合いの映像が映し出される。神様、僕は気づいてしまったのようにド派手なわけではないし、すべての曲でそうした演出を使うわけでもないけれど、だからこそあくまで曲とバンドの演奏が主体であるというこのバンドのスタイルを確かめることができる。
ここまではどちらかというとじっくり聴かせるような、はっとりのボーカルを軸にした曲が多かったが、田辺のフライングVでのギターソロが炸裂する「洗濯機と君とラヂオ」からは一気にギアを上げ、バンドの演奏もより熱さを増していく。
「ハートロッカー」では長谷川が渾身のキーボードソロを弾き、ステージ前まで出てベースを弾いた高野賢也と、同じく前に出てギターを弾こうとしたはっとりが交錯しそうになったり。おそらくどこで誰がどう動くというような決め事を作っておらず、その時その時のテンションや勢いによってそうしたパフォーマンスを行っているからだろう。
「日本テレビの人たちがこのライブを作ってくれていて。今は手軽に楽しめるものがたくさんあって、それはそれで良い時代になったとも思うんだけど、何か一つのことへの愛情が薄くなってしまっているようにも感じていて」
と最後にはっとりは話していたが、今はもうみんながテレビの音楽番組を見て情報を得て、次の日にその番組の話をするような時代ではない。
でもマカロニえんぴつのメンバーたちは昔にテレビの音楽から流れていたことによってみんなが知っているという音楽の存在によって育ってきた部分もあるのだろうし、きっとこのバンドもそうした存在になろうとしている。だからこそロックバンドでありながらもJ-POPのフィールドで鳴っていてもおかしくないような、メロディというものを大切にしているバンドである。
そんなことを思いながら最後に演奏された「ヤングアダルト」の
「夜を越えるための歌が死なないように」
というフレーズは、これからきっとたくさんの人にとっての「夜を越えるための歌」がこの曲をはじめとしたこのバンドの曲になっていくんだろうな、ということを感じさせたし、
「無駄な話をしよう 飽きるまで飲もう 僕らは美しい」
というフレーズはまさに「ヤングアダルト」な気分が全く抜けきらない自分を強く肯定してくれるかのようだった。
フェスなどで大きなステージに立つ機会も増えているとはいえ、初のアリーナは実に堂々たる、はっとりのボーカルとバンドの演奏、何よるもこのバンドの曲がこの規模で鳴らされるべくして鳴っているかのようなスケール感を感じさせるものだった。近い未来にこのバンドがここでワンマンをやるのを見れるようにもっとたくさんの人に、いつか届け、と思うし、いつでもマカロニえんぴつのライブに時間が少し足りないのはやっぱりもっと長い時間、つまりはワンマンが見たいからなんだぜ。
1.青春と一瞬
2.レモンパイ
3.ミスター・ブルースカイ
4.ブルーベリー・ナイツ
5.洗濯機と君とラヂオ
6.ハートロッカー
7.ヤングアダルト
・SUPER BEAVER
もはやフェスでもメインステージに立つことが増えたし、アリーナクラスでもワンマンをやる機会が増えてきている、SUPER BEAVER。だから横浜アリーナに出るとなっても違和感は全く感じない。
SEが鳴ってメンバーが登場すると、上杉研太(ベース)の髪の色が徐々に緑色が濃くなっているのが目を引く。最近は体調不良でライブに参加できないこともあった藤原広明(ドラム)もスティックを掲げながら登場し、元気そうである。そんな中で柳沢亮太(ギター)はローディーからギターを手渡されると
「ありがとう」
とハッキリと口にしていた。このバンドにおいてほとんどの曲で作詞作曲を担当しているのはこの柳沢であるが、そうしたどんなに慣れているとしても周りの人への気遣いや感謝の心を決して忘れないという姿勢はSUPER BEAVERの音楽にもしっかり現れていると思う。
最後に渋谷龍太(ボーカル)がステージに登場して
「レペゼンジャパニーズポップミュージック、フロムライブハウス、SUPER BEAVERはじめます!」
と言った瞬間、マカロニえんぴつの時は4枚に細く分断されていたLEDが中央で1枚の巨大なLEDになっており、そこにバンドのロゴが映し出される。今年のVIVA LA ROCKの時もこの演出を行っていたが、この段階ですでに心が震えてしまう。
「横浜アリーナ、最初から全力で行くからな!全力で来い!」
と渋谷が言うと最近のフェスやイベントでは珍しい選曲となった「証明」からスタート。
サビでは渋谷のボーカルに3人のコーラスが重なっていくのだが、すべての部分で重ねるのではなく、1フレーズ、あるいは1単語だけという重ね方をすることによって強調するべき部分が引き立つし、
「あなたの目に映る顔を見て 僕の知らない僕を知った」
という、まさにポップミュージックの常套句と言っていいような歌詞も、その部分だけ音を削ぎ落とすという構成によってより強く響いてくる。自分がこのバンドの中で最も好きな曲がこの曲なのだが、それはこうした曲の魅力を伝えるために考え抜かれたアレンジによる部分が大きい。
フェスやイベントにおけるSUPER BEAVERのライブは本当に短く感じる。実際に同じ持ち時間でも他のバンドよりも演奏する曲の数が少なかったりするからそう思ってしまうのかもしれないが、「閃光」の
「あっという間に終わってしまうよ」
というフレーズはまさにそうしたこのバンドのライブを見ている時に思っていることをバンド側が代弁しているようでもあるし、
「一生なんて一瞬だって」
というフレーズには果たして自分はその一瞬で過ぎていく一生を悔いのないように謳歌できているのだろうか、と自問させられる。
「テレビだー!」
と渋谷が滅多にない地上波の番組に映ることにはしゃぎながらも、このバンドが戦略などを考えずに真っ向からポップフィールドに勝負していくという姿勢を示す「正攻法」の4つ打ちからエイトビートに切り替わるリズムで客席を揺らしまくり、渋谷もステップを踏むかのように軽やかな動きを見せながら歌う。
曲中に
「120でいくから121以上で返してください!」
というコール&レスポンス、というよりもコーラス部分を観客が大合唱する「予感」を聴くとこうしたフェスやライブなどの
「楽しい予感のする方へ」
足を向けていきたいと思うし、こうしてライブを見ているとこのバンドの歌詞の至るフレーズが自分の人生の指針のようになっていることに気づく。それは「青い春」というタイトルもあるように青臭いというか、鼻で笑われるような単純なものも多いのだが、それを4人の揺るぎない意志でもって歌い演奏するからこそ説得力を感じざるを得ない。そしてそうした歌詞を歌うようになったのはかつてメジャーから脱落してバンドが潰れそうになったという過去があるからこそだ。
こうしてアリーナのステージに立っていると本当にこのバンドがそんな苦しい状況だったバンドなのだろうかと思うこともあるけれど、その経験がメンバー自身を、そしてバンドそのものを強くしたからこそこうしたステージまで辿り着けるようなバンドになったのだろう。
「俺が、俺たちがあなたたちじゃなくて、あなたに何をできるか。それはステージで見せることだけ」
と渋谷が「現場至上主義」を掲げるバンドとしての生き方を口にすると、最後に演奏されたのは
「ロックスターは死んだ まだ僕は生きてる」
と、数々のロックスターたちが亡くなった年齢である27歳をタイトルにした「27」。それはその年齢を超えたSUPER BEAVERはロックスターという存在ではないということを歌っているということでもあるのだが、ロックスターじゃなかったからこそこうしてこれからもこのバンドのライブを見続けていくことができる。
「僕らは大人になったんだ」
大人になったのかどうかは今もまだわからないけれど。
最初に今やアリーナクラスでもワンマンをやるようになった、と書いたが、その通りにもはやアリーナでのライブには貫禄のようなものすら感じるし、これだけたくさんの人がいると渋谷の言葉に100%賛同できなかったり、考えが違う人もいてもおかしくないのに、渋谷が話している時はみんなが渋谷の方を見てその言葉を聞き逃すまいと高い集中力を感じさせる。ロックスターではなくてもそうできるカリスマ性が渋谷にはあるし、
「次はライブハウスで会いましょう」
といつも最後に言うように、どんなに大きな会場のライブになってもこのバンドからはライブハウスの匂いを強く感じる。それはライブハウスで生きてきたバンドだからこそだし、演奏が終わって音が止まった瞬間にステージを去っていく姿はロックスターでしかないんじゃないか、と思うくらいにカッコいい。藤原がスティックを高く放り投げるのも。
1.証明
2.閃光
3.正攻法
4.予感
5.青い春
6.27
・Fear, and Loathing in Las Vegas
この長いバンド名であるがゆえに「ベガス」などの略称で呼ばれることも多いFear, and Loathing in Las Vegasであるが、近年は「なんちゃらラスベガス」とネタ的に呼ばれることも多いし、最近はバンドサイドも自虐的にそのネタを使うようになってきている。
その「なんちゃらラスベガス」という呼び方はバズリズムに出演したことによって一層広まったが、それまではテレビに出るようなイメージが一切なかったこのバンドはいつの間にかこの番組のライブでもおなじみの存在に。5回目の開催にして3回目の出演である。
けたたましいSEが鳴るとメンバー全員が走って登場し、ステージ左右に伸びた花道を演奏前から走り回る。この前に出演した3組は花道を使わなかっただけに、横浜アリーナとしてのステージの広さをこのバンドのライブで改めて感じさせる。
先月にサンボマスターとの対バンでライブを見たばかりなのだが、その時はSo(ボーカル)とMinami(シンセ&ボーカル)が揃ってポーズを決める「Return to Zero」からスタートだったのが、この日はSoが1人お立ち台に立ち、Minamiはシンセの演奏に集中するアニメタイアップ曲の「Just Awake」からスタート。Soのオートチューンボーカルが響き渡ったと思ったのも束の間、三つ編みみたいな髪型に進化しながらも髭面にシースルーというこのまま外を歩いていたら一発で捕まりそうな出で立ちのTaiki(ギター)と長髪ベーシストのTetsuyaがお互いに場所を入れ替りながら花道の方へ駆け出していく。
1曲目がこの曲だったのは「バズリズム」と同じくタイアップアニメだった「HUNTER × HUNTER」が日テレで放送されていたアニメだったからだろうか。
この日は2曲目に演奏された「Return to Zero」でSoとMinamiは間奏部分で懐かしのパラパラのような揃ったダンスを踊って初めてこのバンドのライブを見たであろう人たちの爆笑を巻き起こす。おそらく笑わせようと思ってやっているわけではないのだろうけれど、それでもこの規模で笑いが起こるというのは実に得なバンドであるような気がしてくる。
「なんちゃらラスベガスです!よろしくお願いします!(笑)」
ともはやSoも番組でいじられたバンド名をネタにする中、来月にニューアルバム「HYPERTOUGHNESS」をリリースすることを告知すると、そのアルバムに収録される新曲「The Stronger, The Further You’ll Be」を披露。すでに配信ではリリースされている曲であるが、サンボマスターとの対バンの時に演奏されたのは「The Gong of Knockout」だっただけにこのバンドのライブで演奏することのできる曲の選択肢の多さとセトリの自由さを感じさせる。このバンドくらいのキャリアになると持ち時間が35分だと代表曲のみ連発で終わっても良さそうなものであるが決してそうはならないのは短期間でライブを見ても飽きることがない。
ライブハウスでは主にMinamiが客席に突入しまくるバンドであるが、さすがにステージがアリーナ客席よりもかなり高いし、それはできないだろうと思っていたらステージ両サイドの席にある柵の上に立ち上がったりするというあたりはさすがであるが、あまりにメンバーが激しく動き回るがゆえにステージから落下してしまわないかと心配になってしまう。そんなバンドのライブをモッシュ&ダイブなしどころか全席指定で見るというのもなかなかない機会である。
そんな中でSoとMinamiがカンフー的なアクションに加えてドラゴンボールのフュージョンのような、というか完全にそのまんまなフォーメーションを見せる「Keep the Heat and Fire Yourself Up」はシングルのカップリングという位置の曲であるが、こうして短い持ち時間のライブでも演奏されているということを考えるとカップリング曲という意識はこのバンドにはあまりないのかもしれない。
サンボマスターとの対バンでは陸上十種競技の中でも「100m走編」と名付けられていたが、そう言われるのもわかるくらいの全力疾走っぷりがいったんマラソンを走るくらいのペースに変わる「LLLD」はバンドのラウドなだけではないメロディアスな部分をしっかりと感じさせてくれる曲。このバンドのサウンドを司る要たるTomonoriのドラムが他の楽器が控えめな分より強く響く。
「なんちゃらラスベガスっていう名前だけでも覚えて帰ってください!(笑)」
と、もはやそれでいいのだろうかという感じすらする中で演奏された「Party Boys」はSoとMinamiがエクササイズみたいなダンスを踊り、Taikiがメインボーカルを取る。Taikiはこの番組で存在が強くフィーチャーされただけにこのライブでは欠かせない曲である。
そしてあっという間のラストはデビュー作からの「Love at First Sight」。前回見た時は「The Sun Also Rises」を最後の曲として演奏していたが、この日がこの曲だったのはやはり初めてライブを見るであろう人がたくさんいるということを考慮してのことだったのだろうか。レーザー光線も飛び交う中、
「Everybody dance with us!」
というサビの通りに席があることもおかまいなしに踊りまくる客席と、蛍光イエローのパンツを履いた尻を客席に突き出して振りまくるTaiki。物凄く演奏が上手くて激しいのに見てるとめちゃくちゃ笑えてくるというこのバンドの真髄にして人間性がしかと見えた瞬間でもあった。
ライブ後にバカリズムが
「あの感じ、帰りのこと考えてないでしょ(笑)多分搬入エリアで倒れてますよ(笑)」
と言っていたが、その激しいライブの運動量はもはやアスリート並みと言ってもいいレベル。サンボマスターが100m走編の相手として選んだのも実によくわかることだし、その部分は変わりようもないけれど変わらないで欲しいが、果たして新作アルバムは我々にどんな衝撃を与えてくれるのだろうか。12月リリースということも含めて2010年代のラスボス的なアルバムになりそう。
1.Just Awake
2.Return to Zero
3.The Stronger, The Further You’ll Be
4.Keep the Heat and Fire Yourself Up
5.LLLD
6.Party Boys
7.Love at First Sight
・[ALEXANDROS]
そしてこの日のトリは[ALEXANDROS]。あまりバズリズムの番組のイメージがないバンドであるし、やはり5年目を迎えるこのイベントに初出演。
ドラムの庄村聡泰がジストニア(RADWIMPSの山口智史や氣志團の白鳥雪之丞などもバンドを離れざるを得なくなってしまった病気)で離脱中のため、この日もBIGMAMAのリアドがサポートドラマーとして参加しているのだが、そのリアド含めてメンバー全員がそれぞれ色や柄は違えどフォーマルなスーツ姿で登場。(キーボードのRoseだけはスーツではないけれど)
SEのサウンドがすでに断片的な「Run Away」のものだったのだが、それが白井眞輝のギターのイントロを始めとしたバンドの演奏によってSEから曲のイントロに変化していくと川上洋平(ボーカル&ギター)も登場してハンドマイクで歌い始めたのは「Run Away」。これまでにも何度となくライブにおいてはアレンジを変えて披露されてきた曲であるが、オープニングを担ったこの日のライブにおいてもやはり素晴らしい導入部分としての位置を担っている。タイトルフレーズこそコーラスであるために合唱できるが、サビ全体となるとファルセットボーカルも用いたハイトーンっぷりであるだけに、川上のこの日も絶好調なボーカルっぷりを窺い知れる。
「Run Away」ではハンドマイク歌唱だったその川上がギターを手にして弾きながら歌い始めた「Starrrrrrr」とシームレスに曲間を繋いでいくあたりのテンポの良さはさすがであるが、もはや完全にライブ定番曲となった、アクエリアスのタイアップソングである「月色ホライズン」で川上が「横浜」という曲タイトルを入れながらもコーラス以降の派手な構成の変化っぷりから、公開されたばかりの新曲「あまりにも素敵な夜だから」へと新曲をつなげるのだが、白井はギターを弾きながらステップを踏み、川上はスーツ着用というフォーマルな出で立ちにもかかわらずステージを転げ回りながら、タイトル通りにムーディーなこの曲を歌う。例えば「Aoyama」あたりの曲を過去に作っていたからこそできた曲であると言えるし、そう考えるとこれまでの活動の積み重ねが今に繋がっている。
「今日は横浜アリーナですけど、出演者みんなからライブハウスの匂いがするし、その匂いがステージにも残っている」
と川上もやはりこの日の出演者のライブハウス感を感じ取っていたよう。
そのMC中に音の断片が鳴らされていた「Adventure」ではハンドマイクで歌う川上によるカメラ目線でのパフォーマンスも行われたのだが、本編でギターを弾きながら歌っていたのは「starrrrrrr」のみというくらいにハンドマイクで歌う曲の割合が増えただけに、川上はステージ左右の花道を歩き回りながら歌うことができる。SUPER BEAVERの「27」の歌詞に照らし合わせるならばその年齢をすでに超えた川上はロックスターではないかもしれないが、こうして見るとやはり川上はロックスターだよなぁと思う。
「今日は席がある会場だからみんな遠慮してるところもあるかもしれないけど、ライブなんだから好きにしていいんだからな!ボタン押したら音が出るんじゃなくて実際に目の前で楽器を演奏してるんだぜ!俺たちもライブで好きにやりたいからこうやってバンドやってるんだからな!」
と川上は叫ぶのだが、そこにはやはり自分たちがバンドであり、ライブをやってきたということへの強い自負が現れていた。
そうして観客の歓声をさらに引き出せる状態で演奏された「ワタリドリ」ではファルセットのハイトーンをものともしないような大合唱が起こる。すでに巨大なフェスでのトリも何度も経験しているバンドであるけれど、いろんなバンドとそのファン達が集まるこうしたイベントでもみんなが歌える曲を持っているのは本当に大きい。この曲を歌おうとすると川上が本当に歌が上手いことがよくわかるのだけれど。
アンコールに呼ばれて再びメンバーが登場すると、
「秋からまたツアーもやるし(来年の秋?)、またこうして見に来てくれたらと思います。最後の最後に横浜アリーナ汚しまくって帰ってもいいですか!」
と言って演奏されたのは川上の重厚なギターリフによる「Mosquito Bite」。スタジアムで響かせるべきロックとして生み出した曲であるが、本当にこの規模に相応しいスケールを持つ曲になった。間奏で並んでギターを弾いた川上と白井が拳を合わせると、最後にキメを連発する際に白井は暴れ回るようにギターをぶんまわし、最後にはドラム台の上に立ってギターを鳴らした。演奏し終わった後のメンバーの姿はまさにロックの王者としての風格を感じさせた。リアドが満面の笑みを浮かべていたのがまた嬉しいところだった。
去年アルバムをリリースしているが、そこからも「月色ホライズン」などハイペースで曲を生み出しているだけに、来年にもおそらくアルバムが世に出るだろう。サトヤスが復帰できる気配を感じられないのはなかなか辛いところもあるけれど、リアドというスーパードラマーがこのバンドのために力を貸してくれているのは実に頼もしく感じるし、サトヤスがいなくても物足りなさを感じないのはやはりリアドがドラムを叩いているからなのだろう。
1.Run Away
2.starrrrrrr
3.月色ホライズン
4.あまりにも素敵な夜だから
5.Adventure
6.ワタリドリ
encore
7.Mosquito Bite
文 ソノダマン