2018年3月13日のライブを最後に沈黙を続けてきた禁断の多数決が、1年半の時を経て再び動き出した。怒涛の新曲6連続配信リリースに加え、女性メンバー陣も一新、再始動ライブも大成功と、大きな変革の中にいる禁断の多数決。その中心人物であるほうのきかずなりに、沈黙の1年半と第5期 禁断の多数決の構想について語ってもらった。概念すらあいまいな「禁断の多数決」という集団が、よりあいまいに――しかし、はっきりと見えてくる、そんなインタビューになっている。
文・インタビュー 高橋数菜
「ツイッターを最近またやり始めて。禁断(の多数決)が復活したので、ちょっとやった方がいいかなっていう義務感っていうんですかね。ツイッターの反応を見てて思ったんですけど、エピソード的なことが気になってフォローしたとか、事件的なことがあって追っかけるようになったとか、そういうことが禁断の多数決には求められているんだなって思いました」
――面白い方がいいですよね。ライブ感があって。予定調和ってつまんないなあというか。
「そうですね、アンタッチャブルの復活劇とか最高でしたね。新メンバー加入の路上ライブも『高円寺でやる、ということだけしか言わないでいいんじゃない?』っていうメンバーもいて、細かい場所は言わずにいきなりやるのが面白いっていう。アンタッチャブルがああいう感じで復活して話題になっていて、『間違ってなかった!』みたいな」
――なるほど。明日が楽しみですね(本インタビューは2019年12月7日に実施)。先月、第5期 禁断の多数決が初ライブをやって、その直前に6曲連続配信したじゃないですか。その6曲を聴いて、僕は「これからの禁断の多数決は、客を揺らせるメロウな感じでいくんだろうな」って思ったんですね。「イエーイ!」っていうよりはずっと心地よく揺れてる、みたいな。でもライブに行ったら女の子たちが「イエー!!」って言いながら登場してきて「オイ!オイ!」と煽るっていう、先行リリースの6曲の印象とはまったく違うアプローチのライブでびっくりして。ほうのきさん的には第5期はメロウな感じでいくという考えだったんですか? それとも別にテーマがあったんですか?
「最近作ってる曲は本当にメロウな曲しかないんですよ。これから新曲もどんどん出していくんですけど、他にもラップの曲とかいっぱいあって。一年半も休んでたんでめっちゃ曲があるんですよ。先行リリースした6曲の中にひとつだけ激しい曲、“フラッシング・ライト (ノイバウテンタイム)”っていう曲があるんですけど、あれはもう昔の曲で。今の揺れるようなテンションと違うんですよ。『あの曲、俺の今のモードともアレだし』と思ってて。連発で出すと混沌とするからその中に混ぜちゃおうと思って」
――あのライブはリハーサルからアゲアゲな感じだったんですか?
「江森(丈晃) さんっていう禁断のジャケットのデザインとかをしてくれてる人がいて、『明日行くよ』みたいな連絡が来まして。『ここだけの話なんですけど多分明日グダグダです。すいません』ってLINE を返して。で、ライブの当日の朝、電車で今日どうしようかな~、と思ってたら江森さんが連投ツイートしてて、それがあったかくて。『ほうのき君に聞いたらグダグダって言ってました(笑)』、『ライブなんて予定調和やカラオケそのまんまのを聴かされてもつまんない。ほうのき君が骨折したりとかカオスの混沌としたもののほうがお客さんにとっていい』ってそういう熱いツイートをしてくれていたんです。メンバーに江森さんのツイートを転送したんですよ。『今日は予定調和なしで行こう!』 って。そのライブで俺はお酒を飲まないことを前もって決めてたんです。お酒飲むとめちゃくちゃになっちゃうんで。で、ライブが始まって1曲目が終わったくらいのときに、酒飲むかまだ悩んでたんですよ。シラフでどこまで行けるかってあるじゃないですか。そしたらライブ中ですよ。本番中なのに袖でメンバーとスタッフが『ほうのき!』って呼んでて。『これはあかん。お前酒飲め』って言われて日本酒2杯くらい一気飲みして。結果的にうまくいったかはわかんないですけど、あんなライブになったんですよ」
――じゃあ当初はメロウでいく予定だったんだけど……。
「ちょっとまずいなあってことで方向転換した感じですかね」
――ライブ見てて思ったんですけど、第3期のアゲアゲのライブを第5期の彼女たちなりに咀嚼して盛り上げようとしてるのが見えた気がしますね。
「本当に江森さんのツイートが助かってますね。『これじゃないと意味がない』っていうことを言って、みんなもそういう気持ちになったんだと思います。だから、彼女たちなりに禁断のライブを咀嚼した感じになったんだと思います」
――現メンバーはみんな禁断のライブを見たことあるんですか?
「ひとりかふたり、ほとんど見てないですね」
――だから最初「オイ!オイ!」って言いながら入ってきた子、すげえなあって思ってて。
「誰だろう?(笑)」
――あのライブで「音楽経験あるなあ」って思ったのが元MIGMA SHELTERのセイちゃんとナオちゃんで。「過去なんかやってたんだろうなー」っていう気はしましたね。
「ナオちゃんは過去なにも音楽活動をやってないんですけど」
――そうなんですか! ダイブもするしすげえ盛り上げ上手だなーって思ってて。
「元メンバーのさひろちゃんが『ナオちゃんはほげちゃんに似た雰囲気とか動き方でいいね』って言ってました」
――いや、すごい意外ですね。
「そうそうそう。だからその辺が奇跡的に良いバランスになっていて、セイちゃんがいるのも奇跡的なバランスで。あの子、歌唱力があるんですよ。ナオちゃんのあのキャラもあって。素人っぽい子もいてっていう、そのバランスが良かったのかなって思いますね」
――ブラジルさんって初ライブの時とか普通の女の子だったのに、第3期のラストの方には禁断のアイコンみたいになってたじゃないですか。だから素人っぽい子たちの成長がすごい楽しみですね。あのライブを終えての手応えってどうですか?
「手応えの前に感じていることがあって。この言い方で合ってるのかわからないですけど、『インターネット=おしゃれ』みたいなのがなくなった感じがするんです。ピュアな感じに近いと言うか。 で、MCを珍しく長めにしたんですよ。『グループとかバンド抜きにして、ここにいる人みんな禁断の多数決でいいんですよ』って言ったんですけど、あれ本当の気持ちで。最終的には村ができたらいいなと。駆け込み寺みたいな。あと俺、別にチェキ需要ないんですけど『せっかくなんで俺入れといて』ってくらいの感じでリストに入ってて。今回のライブで一番面白かったのは、チェキを撮り終わったあとに、俺を中心にお客さんがサークルみたいになってずっと喋ってたんですよ。みんなから『 MC のあれすごくいいと思います』って言われて。話を聞いてくと、電通に就職が決まってる子がいたり、資金調達の仕事をしている人がいたり、あと明日、新メンバーで発表する弾き語りやってる女の子とかもいたんですけど、アベンジャーズ感あったんですよ。手応え的になんか不思議なんですよね。なんとも言えない感じなんですよ」
――メンバーが大きく入れ替わってもWWWが埋まったのはよかったですね。
「それはやっぱり6連続リリースと、セイちゃんの加入がデカかったと思いますね」
――どういった経緯でセイちゃんが加入することになったんですか?
「世間的に見たらブラジルとトレードみたいに見えるかもしれないですけど全然関係なくて。セイちゃんとの共通の知り合いがいて、セイちゃんと話す機会があって。『そういえばセイちゃんって今なにやってんの?』って訊いたら『グループとかはなにもやってないんだよね』って言ってて。『禁断の多数決に興味ある? 歌うまいよね?』っていう流れで加入した感じですね」
――セイちゃんの加入は終盤に発表されたじゃないですか。最近のお話だったんですか?
「WWWでライブをやることを発表した時には、まだセイちゃんの加入は決まってなくて。“フラッシング・ライト (ノイバウテンタイム)”に合うボーカルの子がいなかったんですよね。メロウな曲が合う子は何人かいたんですけど。でもアクティブな突き抜け感を持った人はいなくて。そんなボーカルが欲しいなと思ってて。セイちゃんがロック好きって知って、しかもマリリン・マンソンとか、そういうちょっとダークなロックが好きみたいで入ってもらったんですよね」
――セイちゃんがいるから全体のレベルも底上げされてる感がありますよね。この新曲6曲が過去の禁断の楽曲に比べてすごい歌詞が進化してるなと思ったんですよ。自分の中で「歌詞変わったな」とか歌詞を意識して変えてるなとかあったりするんですか?
「いま言われたからじゃないんですけど、俺も自分で歌詞が変わったことを感じてて。好きな言葉と好きじゃない言葉が前より明確になってきたんですね。だからちょっと前の曲だと『この歌詞嫌だな』って曲があるんですよね。OLEOってわかります? 禁断のライブを装飾してくれる仲間がいるんですけど。 OLEO、天才で。岡本太郎みたいなやつなんですけど。 OLEOが俺によく言ってくれる言葉がけっこう嬉しくて、『ほうのき君はやっぱり歌詞が一番いいよ』って言うんですよ。禁断が止まってた時期あるじゃないですか。いろいろあった時に、OLEOに『やるしかないから頑張るわ』って言ったら『いろいろあったから歌詞楽しみだね』って言われて、それが俺の中に残ってるんですよ。『ほうのき君、ちょっと普通じゃない人生送ってるから、そのぶんいい歌詞できればいいじゃん』と言われて『ああ、そっか』と思ったんですよね。この6曲以外は新しく歌詞書いてないんですよ」
――じゃあモードが変わったのが現れているのはこの6曲しかないっていう。
「歌詞は完全にそうです。デモトラックとメロディは前からあったんですけど、新しく書いた歌詞はこの6曲だけですね」
――明確に変わったなってすごい感じるんですよね。例えばこの“WAR OF THE WORLDS (宇宙戦争)”なんですけど、≪WAR OF THE WORLDS≫日本人的に「ワーオブザワールズ」って発音させるんじゃなくて「ワオッワォ」っていうリエゾンを意識して発音させているのもそうだし、ほかのワードも波のようにたゆたっているというか、濁点やひっかかりみたいなものを全部なくして、ずっと心地いいままでいられる歌詞になってるんですよね。そんな中で出てくる≪鉄刺青≫。
「高橋さんやっぱすげえわ」
――え?(笑)
「さっき言ったOLEOと、VJをやってもらっている朝倉太郎っていう大阪の仲間がいるんですけど、彼らは本当のことしか言わないんですよ。その朝倉太郎君から電話がかかってきて『ほうのき君、鉄刺青やばいよ! 鉄刺青は出ないよ!』って言われて。いま高橋さんが言ったように、そういう人たちってポイント一緒なんだなって思ったっすよね」
――“トゥナイト、トゥナイト”で小林克也さんが曲紹介してるじゃないですか。あれめっちゃアガりますよね。≪鉄刺青≫の響きはそれと似てるんですよね。僕はほうのきさんが確信を持って≪鉄刺青≫の「て」の差すような音が欲しいんだろうなって思ったんですよね。
「『差す』っていう意味は合ってるんですけど、そこやばいよってピンポイントで言ってくれたのが『まじで!』っていう感じすね。メンバーの間だと『この曲ノリ悪いよね』っていう話があって。はました(まさし)と『この曲ちょっとわかりづらいのかな』っていう話をするんですよ。結構凝った曲なんですけど、チャイルディッシュ・ガンビーノの“This is America”みたいな、黒人のリズムなんですよ。『ドゥッドゥッドゥタッ』っていう。あと≪ドゥーン≫のところは TWICE の”LIKEY”のラップとほぼ一緒なんです。うちら的には会心の1曲だったんですけど、なんか反応悪いよねっていう話になって」
――いやでも最高っすよマジで。音は昔から最高だったんですよ。歌詞が追い付いてきたというかレベルが上がったというか。
「でも最近、ファンの人に『歌詞が最高です』ってすげえ言われるんですよね。前はなかったんですよ。OLEOはずっと言ってたんですけど。『あんなわけわかんない歌詞でもいいの?』って訊いたら『それがいいんですよ』くらいに言うんですけど。あーそうなんやと思って。フォークシンガーの友部正人ってわかります? 友部正人の歌詞が好きなんですよ。詩集も持ってるんですけど、あの人の歌詞の影響がめちゃくちゃでかくて。≪冬のストーブと一緒に旅をした≫とか、抽象的なんですけどイメージがちゃんと浮かんで、嫌な言葉を使ってなくて、ちょっと アンディ・ウォーホル的なところもあって。≪冬ストーブ≫とか素敵だなと思って。≪夕焼けが田んぼに落ちて≫とか、抽象的なんですけど、画が頭に浮かぶというか、その影響があるんですよね」
――では新曲を発表された順に話を伺っていきますね。“ジャマイカン・シャンペーン”。公開したものにはほうのきさんのボーカルが入ってないですよね。これは何か意図があるんですか?
「≪ブルーブルーブルー≫のところ、ライブでは歌ってるんですけど意図はなくて。どうしてこうなったかっていうのはあるんですけど。この曲が唯一、今いるメンバー全員の声が入ってるんですよ。セイちゃんが入る前だったんでセイちゃんの声だけないんですけど。6人くらいボーカル入ってるんですよ。編集めちゃくちゃ大変で。全部入れていくとぐちゃぐちゃで、『これ俺が入るスキがないな』って感じで」
――個人的にはほうのきさんの声欲しいなーって思いました。
「ツイッターで見たんですよ。気がつかんかったんですけど、『禁断の6曲連続リリース、こっそりと全部ほうのきさんがキモい声入れてたり合いの手入れてたりしてて狙ってんのかな』って書いてる人がいて。『確かに!』って思って。それをツイートした人は、ただ可愛い曲にしてるんじゃなくて、キモいおっさんの声が入ってるのがいいって書いてたんですよね」
――でもライブではほうのきさん大々的に歌うじゃないですか。だからどういう経緯があったのかなっていう。
『全員の声を入れたから入らなくてもいいかっていう、それだけの話っすね」
――ほうのき声入りバージョンも配信して欲しいなって思いました。綺麗すぎるんすよね、ライブを体験しちゃうと。
「あ、でも、この曲だけミュージックビデオ作ってないんですよ。そのバージョンで俺の声入れるのアリですね」
――すみません、ちょっと戻っていいですか。“WAR OF THE WORLDS (宇宙戦争)”なんですけど、MVに刺青の子(游姫)が出てくるじゃないですか。
「游姫ちゃんですね。はい、出てます」
――ライブを見ていて思ったんですけど、結果的にアゲるライブになりましたよね。游姫ちゃんがもっと煽ってくれたらいいなーって思いながら見てたんですよ。でもビデオを見てると游姫ちゃん早く出てこないかなって待ってる自分がいて。すごくビデオ映えするというか、「早く刺青見せて!」ってなるんですよね。
「それわかります。あの子マジで映えるんですよ」
――游姫ちゃんには何を求めている感じですか?
「サーカス団みたいな感じで。身長2メートルを超えてる人を本気でずっと募集してるんですけど、そんな感じで。游姫ちゃんに『歌得意ですか?』って訊いたら『歌できないです』って。『DJできますか? ボタン押すだけなんで』って訊いたら『それやってみたいです』って流れで。『(禁断の多数決に)いてほしいです。いてくれるだけでいいです』って言いましたもん。アイコンですかね」
―― Happy Mondays の彼みたいな感じですかね。
「ベズ! ベズ世代なんでマジでああいうの好きなんですよ。」
――彼女、普通の人から見たらちょっと怖い印象があると思うんですが、メンバーとの関係は?
「游姫ちゃんはヤンキーっぽい感じの人なんです。姉御って感じで。そういう意味でみんな頼っていたりする感じですね。セイちゃんも多分ヤンキー系で、俺もなんならヤンキーの街育ちで、そういう子たちがいるって楽なんですね。筋が通っているってところが助かりますね。間違っていることがあったら『それ違うんじゃないの』って叱ってくれるという」
――游姫ちゃん見ながら「ポールダンスとかしてくれたら最高だろうなー」って思ったんですよね。
「ああ、早く発表したい、ロッキーのテーマみたいな新曲があるんですけど、その曲に関してはライブの演出が俺の中で明確にあって。誰か役者でもいいからボクサー役を頼んで、游姫ちゃんにラウンドガールやってもらおうと思ってて。サビが俺のめっちゃ早いラップなんですよ。殴り倒すようなラップで。そこでボクサーと一緒にラップしちゃうみたいなのを早くライブでしたいんです。だからポールダンスって言われた時に『さすが!』って思いました。ラウンドガール絶対やってもらおうと思ってて」
――ちなみに、ボブリシャスは抜けてないんですよね?
「ボブは抜けてないです」
――でも、前回のライブに出なかったですよね?
「ボブは自由参加メンバーで、気が向いたら参加してって感じで。あと前回は第5期新メンバーのお披露目も兼ねていたので」
――では第5期の新曲の話に戻りましょうか。続いて“フラッシング・ライト (ノイバウテンタイム)”。工場に音を録りに行ってましたよね。あの音が必要だって思ったのはどの段階だったんですか?
――この曲ができた段階からですね。最初は自宅で電動ドライバーを使ってネジ開ける音を入れてたんですね。工場を借りるの大変だなとか思ってて、本格的な音を入れるのは諦めてたんですよ。そしたら地元の後輩が工場やってるの忘れてて。聞いたら『いいよ』って。そんですぐ音を録りに行って、急いで曲に入れてっていう感じで」
――「録りに行きます」ってほうのきさんがツイートした2日後くらいにこのビデオがあがってびっくりしたんですよ。
「ほんと頑張りましたね。一斗缶を叩くのがひとつの見世物になっちゃって。そんなつもりじゃなかったんですけど」
――これも歌詞の話をすると、ずっとメロウが続くんですけど≪リアライズ≫だけ昔の禁断感がありますね。
「うわあ、ほんとそうです。昔よく使っていたんです。ビジュアライズとかリアライズっていうワードを。≪リアライズ≫はデモのめちゃくちゃ語の時から≪リアライズ≫でした」
――曲がいいのはもちろんなんですけど、歌詞が追いついてきたと言うか。
「嬉しいですね。やっぱOLEOが大きいんですよ。歌詞の降りかたとか当てはめかたがすごい変わったんですよね。あとさっきも言ったんですけど、歌詞が苦で仕方なくて。一年半止まってた最大の理由が、歌詞が苦痛で仕方なかったんですね。今回の6曲は一気に歌詞を書いたんですけど、歌詞を書くのがすげえ楽しくて。それが出てるのかもしれないです。楽しいっていうかスイスイ降りてきて」
――それはなにかスイッチが入ったってことなんですか?
「たぶんスイッチが入ったっていうのと、OLEOの『いろいろあったから歌詞楽しみだね』って言葉が効いてるんですよね。それを言われたのは結構前なんですけど、ずっと残ってて。スイッチがポンって入って作詞が好きになったんですよ。禁断がなんでいま活発かっていうのは、新曲をどんどん出したい、なんなら歌詞を書きたいからなんですよね」
――アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンはお好きなんですか?
「昔からこわい印象しかなくて。OLEOの話なんですけど……今日OLEOの話多いな(笑)。OLEOって全部廃棄物で作品を作ってるんですよ。そのテーマが彼のなかにあって。この曲も廃棄物じゃないですけど、なんかそういうのは入れれたらなあと思ってたくらいですかね。この曲を出した2日前くらいにたまたまノイバウテンが再結成して、タイミングばっちり! って思いました」
――ひとつ訊きたいんですけど、この曲のビデオでビニールにピンクの液体を突っ込んでるシーンあるじゃないですか。あれは何を表してるんですか?
「これ、最初は男性が吊られている画を入れようと思ってたんですよ。すごい悩んで俺なりの忖度があって(笑)そのシーンを変えたんすよね。高橋さんマジで気づきますね。差し替えたからちょっと違和感あるんですよ。鋭いなマジで。俺の意図してないもん入れてるんで、その通りですわ」
――では続いて“ Beach Game”を――。
「高橋さん、ひとつ映像を見せていいですか。去年のクリスマスイブイブくらいに車で長野県の山道を走ってたんですよ。そしたらでっかい鹿っていうかトナカイが現れて、うわっと思って、クリスマスの前だから『やべえ俺サンタかよ』ってなって。ドライブレコーダーに写っちょるなーと思って、その映像なんですけど……これです。一瞬なんですけど、すごくないですか?」
――角がすごいですね。本当にトナカイみたいで。
「すごくないすか。だから俺サンタクロースあるなあって思ってて」
――ははは。では“ Beach Game”。これはアウトランですよね。
「アウトランめっちゃ好きなんですよ」
――この曲も音はメロウですけど、歌詞はちょっとメロウじゃない感じがするんですよ。なんか浮き沈みがあるというか。
「この曲が6曲の中で一番、歌詞がノレなかったんですよ。これいいかな、大丈夫かな、っていう歌詞があるんですよ。自分の中で響きを無視した場所が結構あるんです。音ではなく歌詞を取っちゃったんですよね。この曲はほかと違ってゲームの曲っていうのが明白にあったんですよ。あとディカプリオの『ザ・ビーチ』っていう映画のビーチとゲームっていうテーマが当初からあって。歌詞をビーチとゲームに寄せたいっていうので、ちょっと歌詞に波があるんですよ」
――でも≪オーマイ 101(ワンオーワン) 行け!大行進!≫は出ないっすよ。
「あ! そこもすげー言われてて。101って101匹わんちゃんなんですけど。『101は出ないよ』って」
――で、“バニラ・フォグ”ですね。これはもう普通にいい曲で言うことがないっていう。
「女性メンバーの一番人気で。この曲、女の子人気があるんですよね」
――僕は“WAR OF THE WORLDS (宇宙戦争)”がダントツで好きですけどね。“バニラ・フォグ”は主人公が見えすぎるところがちょっとあって。そして“ Spring Break”、これがラストですか。当初、5曲連続リリースだったところ、この曲を急遽追加したんですよね。なんで追加しようと思ったんですか?
「この曲のラインが本当は今後の禁断なんすよ。この曲のラインの曲が今後増えるんですよ。違う曲もありますけど、今後を示した曲をやっぱ出しとかんとなっていう意味で急いで入れました。だからビデオに女の子ひとりもいないんですよ。撮影の時間もなくて。自分ひとりで撮ったんですよ」
――最後にこれがきたから、僕も禁断はこれからメロウな感じで行くんだろうなーと思ってたんですよ。そしたらアゲアゲのライブだったんで、答え合わせをしたくて。でもあのライブでも大成功だったんで禁断すげえなっていう。
「日本酒を一気したせいでめちゃめちゃでしたね俺は」
――今後のライブはどっちでいくんですか? ブチアゲでいくのかメロウでいくのか。
「しばらくブチアゲで行くと思いますね」
――それはいろいろいたしかない部分が――。
「そうですね、ありますね。俺は徹底してるんですけど、禁断ってメンバーめちゃめちゃいるじゃないですか。大人数がステージに出てるの嫌なんですよ。みんなはそれ気にならないみたいなんですけど、それが嫌で。なんで出る曲出る曲、メンバーを細かく決めてたんですけど、俺が『めちゃくちゃしていいよ』って言ったらみんな出てって。お客さんの反応を聞いてると意外だったんですけど、みんながいてぐちゃぐちゃな感じがいい、っていうのが結構あって。ただ本当はもうちょっとスマートにしたいんですよ」
――終始ぐちゃぐちゃだと楽しくなくて、最後にみんな揃ったからの楽しさっていうのがありますよね。今回のライブ、男性陣が楽器を弾かなかったですよね。あれはなんでですか?
「コーチェラフェスティバルあるじゃないですか。あれ見るのが好きで。どのステージもほとんど楽器がなくて、ほとんどラップトップで。ジェイデン・スミスとかステージを走り回ってて『これ新しいな』と思ったんですよ。完全に時代がもう楽器じゃねえなと思ったっていうか。ワンマンライブをまたやりたいんですよ。その時は楽器を入れようって思ってるんです。レア感を出したいっていうか、このラップトップのセットでどこでも行ってライブをたくさんする予定なんですよ」
――はましたさんと上野(勇介)さんからは「楽器弾かせてよ」的なことは言われないんですか?
「言われないです。みんな納得してて。世界の音楽事情とかをシェアしてて。メロウになっていくのもそんな感じですね。US メインストリームとかメロウな曲めっちゃ多いんですよ。メロウな曲がもう止まんないっすね本当に」
――新メンバーはどうやって決まった感じなんですか?
「俺、 MC でも言ったんですけど、いまはネットサーフィンって言葉ないんですかね。本当にネットをしなくなって。 SNSをする頻度も減ってしまって。あと自撮りが凄すぎて可愛い子だらけじゃないですか。『可愛い子を探したりしてるんですか?』ってよく言われるんですけどまったくしてなくて。『スパイダーマン:スパイダーバース』 っていう映画がきっかけなんですけど、どんな映画かっていうと平行世界の話で。この世界にいるスパイダーマンになにかが起きて世界線が変わって、いろんなパラレルワールドのスパイダーマンが集まるんですね。全員スパイダーマンなんです。色、形、男性、女性さまざまなんですけど、それがおもしれーと思って。一年半スイッチ入んなかった時に、徐々に US メインストリームの音楽が明確に変わってきたんですよ。トラップばっかりになってトラップばかり聴くようになって。そっからなんか世界が違って見えるようになったんですよね。子供の頃、ドラえもんが未来に行った時の色合い――ちょっと水色のあの色に世界が見え始めて。で、スパイダーマンの映画見て『パラレルワールドって本当にあるんじゃないかな』って思ってて。そのタイミングで Spotify でプレイリストを作ったんですよ。それをツイートしたら食いつきがよかったんですね。俺が SNS ほとんど見てなかったんで評判いいっていうのが嬉しくなって、『ほうのきのプレイリストいい』って書いてる人いねえかなって思って久々にエゴサーチしたんですよ。そしたらそこにナオちゃんがいて。禁断の多数決でこの曲が一番好きってツイートしてて、それが“Shine”って曲で。禁断の多数決でいちばん手間がかかってていちばん尖っている曲で。『誰!?』と思ってアカウントを見たら顔も可愛くて。で、ここが大事で、『電話できますか?』って訊くんですよね。ここで『一週間後でもいいですか』って答える子は俺の中ではないです。で、『今すぐできます』って返ってきて、これキタ!と思って『名前なんていうの?』って訊いたらナオですってうちの妹とまったく同じ名前で漢字も同じだったんです。これ完全にスパイダーマンと一緒やと思って。実際に会ったら俺と雰囲気が似てたんすよ。ナオちゃんと俺、同じ人間かもしれないって言ったら『なに言ってるんですか?』ってなったんですけど」
――捺夏さんは?
「捺夏ちゃんはスタッフが見つけた子で。メガネをかけている、長い黒髪の子を入れたいって話をしたんですよ。スタッフが捺夏ちゃんを見せてくれて。ツイッターを見たら8月15が誕生日って書いてあって、うちの妹と同じ誕生日で、『これ、うちの妹だ!』って感じです」
――ちゃんと会って決めてるんですよね?
「一応、ちゃんと一緒にカラオケに行って声を聴いて決めてます。カラオケに絶対行くんですよ。歌声絶対に聴きたいんですよ。オーディションじゃないですけど、聴かないとわかんないじゃないですか。『スナック禁断』っていうイベントを何年か前にやって。その時、当時高校生で来ていた女の子がいて。緋奈ちゃんって子なんですけど。で、去年の12月だと思うんですけど、長州バー行ってそっから駅に向かって歩いていたら『ほうのきさーん』って声かけられて、『誰!?』『私です、緋奈です』『あの子!!』ってなって。当時とすげー変わってて。アイドルがやってるカフェあるじゃないですか、そこで働いてるんです、って言うんです。ほうのきさん、何か面白いことやりましょうよって言われて、さっきの黒髪メガネの子を探していたのと一緒でギャルも探してて。『ギャルになれる?』って訊いたんですよ。そしたら『なれます』、『髪の毛染めれる?』『染められます』。ではメンバーになってっていう感じで」
――エビータさんは?
「エビータも面白くて、俺のインスタにずっといた子がいて。『誰これ?』ってずっと思ってて。魚の頭とかグロテスクな写真をいっぱいアップしてて『誰やろう?』ってずっと思ってて。で、ある時、その子が弾き語りのピアノの動画をアップして、『この子、歌えてピアノも弾けんの!?』って思って、それが去年の12月になるんですけど。で、すぐ DM して『電話できますか?』って訊いたら『いいですよ』ってなって。それが実はさっきのトナカイの日なんですよ。その子、長野県に住んでて。その時たまたま長野を車で走ってて。『家どこなの?』って聞いたら『長野です』って。めっちゃ近いやん! ってなってさっきトナカイにも逢ったしすげー! っていう話をしたら『ほうのきさん、もう一個すげー話あります。私、今日が誕生日です』って言われて『タイミング~!』ってなって」
――ここで繋がるんですね(笑)。セイナさんは?
「セイナちゃんも面白くて、エビータと繋がったじゃないですか。で、インスタですげぇ可愛い子の写真が流れてきたんです。その子がとにかくおしゃれだったんですよ。俺、変なチカラがあるんです。なんとなく『この子どう思う?』ってその写真をエビータに送ったんですよ。そしたら『ほうのきさん、その子親友です』って。俺がその写真をエビータに送ったのは偶然で。しかも『その子めちゃめちゃ歌上手いですよ』ってエビータに言われて3人でカラオケに行ったら本当に歌うまいんですよ。みんなタイミングですね。すぐ電話できるっていうのが重要で。めぐりあわせだと思ってるんで」
――游姫さんは?
「游姫ちゃんだけちょっと違って、インスタでフォローしてるなんかやばい人がいるんですよ。日本刀とか薬物とか札束とかアップしてる人がいて。『誰これ?』って思いながらフォローしてて。ある日、そのやばい人が游姫ちゃんの写真を載せたんですよ。こんな刺青だらけでこの人がメンバーだったら最高だなあと思ったんすよ。で、禁断のスタッフに『この人知ってます?』って訊いたら『知ってる。知り合いの知り合いかも』ってなって、会うことができて、メンバーになったって感じです」
――……游姫ちゃん、逮捕されないですよね?
「そのやばい人とは知り合いじゃなくて、拾い画像を載せていたみたいで。游姫ちゃんは本当にまっとうな人なんですよ」
――明日発表される子(ソれん)はどういった経緯で?
「禁断の6連続リリースの最中に、nanaってアプリあるじゃないですか。あれに禁断の曲を弾き語りでいっぱいアップしてる女の子がいて、それをツイートで知って、連絡を取ったんですよ。『来週ライブあるんですけど、楽屋にぜひ来てください』って話をして。その電話が“バニラ・フォグ”を出した3日前くらいだったんです。その後、“バニラ・フォグ”を夜中12時にアップしたら1時間も経たないうちにその子から“バニラ・フォグ”の弾き語りが送られてきたんですよ。しかも1時間で仕上げたとは思えないクオリティの歌い方をしていて。歌い回しが結構完璧だったんですよ。これはヤベえってなって。で、ライブでさっきのアベンジャーズ状態になって。じゃあメンバーにって感じで。あともう一個あって、『はじまりのうた』って映画が好きで。音楽プロデューサーの男性が自分で立ち上げたレーベルをクビになっちゃってバーで酒飲んで落ちぶれてたら、女の子が弾き語りをしだして、『最高だ。俺と一緒にやろうよ』って会話から一緒に路上ライブをしていく話なんですけど、それをしたくて。それがデカいっすね。路上ライブをしたかったんです。これから路上ライブを定期的にしていきたいんですよ。禁断の多数決の概念がないんですよって話と一緒なんですけど、なんならこの子は弾き語りだけの禁断の多数決でもいいんです。今って、曲の発信のしかたがネット主流じゃないですか。でも新橋の駅前で禁断の曲を弾き語りでやって、新橋のおっちゃんとかに聴かせたりとか、ネットで禁断の音楽に巡り合わないであろう人たちに聴かせたらどうなるんだろうっていうのを試したかったんですよね。曲の強さを確かめたいじゃないですけど」
――禁断の多数決は今後どうなっていくんですか?
「明日はうさぎの着ぐるみで現地まで向かうところをインスタ動画とかツイキャスしようと思ってて。そういうちょっと過激派じゃないですけど、禁断に求められているのってそういうところがあると思ってるんで。うさぎと一緒に電車乗ってたりとか、禁断らしさを出していきたいんですよ。オンラインサロンという言葉があまり好きじゃないんですけど、それをやりたくて。それを皆と相談してるんですよ。あと明確にあるのは、拠点を作りたいんです。禁断の多数決の事務所を兼ねた飲み屋を作りたいと思っていて。そこには禁断のメンバーもスタッフもお客さんもいていいし、リアルに禁断の多数決で繋がっている人たちが交流できるスペースを作りたいと思っていて。これだけメンバーもいるんで、誰でも店番ができるんで。っていう感じですね。最終目標は村を作りたいんです。駆け込み寺みたいな」
――ライブをガンガンやるっていうのは路上ライブをガンガンやるって意味ですか?
「それはどっちもですね。路上って少数でできるじゃないですか。あと月1でなんかやりたいと思っていて。今月は大阪に行くんですよ。1月には蒲田温泉の新年会をまたやるんで。なんで2月にまたがっつりしたものを予定してるんで期待しててください」
information
ギターウルフ presents 宇宙戦艦ミソノFEVER 2019 宇宙美女の液体スパークMAX
2019年12月27日(金)大阪府 ユニバース
<出演者>
ギターウルフ / 中村達也 / 切腹ピストルズ / 禁断の多数決 / DEATHRO / おとぼけビ~バ~ / なるせ女剣劇団 with セイジ / DJ O.K.D
禁断の蒲田温泉新年会2020
2020年1月25日(土)東京 蒲田温泉
詳細は後日発表