2日目。例年はだいたい初日は平日で2日目からが年末休みという世間のスケジュールなのだが、2019年は初日が土曜日だったために初日とは特に変わりはない。強いていうなら初日よりは物販が混雑していないこと。
12:00〜 9mm Parabellum Bullet [GALAXY STAGE]
間違いなくロッキンオン編集部で最も9mmのことが好きな男こと、編集長の山崎洋一郎による
「2019年12月29日、楽屋番号も9番!」
というもはや狙ったとしか思えないような9ずくめのGALAXY STAGEのトップバッター、9mm Parabellum Bullet。今年は結成15周年イヤーとして様々な試みを行ってきた。
おなじみの「Digital Hardcore」のSEでメンバーたちがステージに登場。この日のサポートギターはHEREの武田将幸。
菅原卓郎(ボーカル)、滝善充(ギター)とのトリプルギターによる分厚いサウンドの「ハートに火をつけて」でスタートすると、卓郎は
「手触りだけのCOUNTDOWN JAPANはー!」
と歌詞をおなじみのご当地バージョンに変えて叫び、間奏部分では中村和彦(ベース)も含めて熱い演奏にもかかわらずちょっとにやけてしまうようなステップを見せる。
お立ち台に立つ滝の「これぞ9mm!」なギターサウンドのイントロによる「反逆のマーチ」から、2019年に生まれた9mmの新たな傑作アルバム「DEEP BLUE」のタイトル曲「DEEP BLUE」を披露。これからもこの曲をはじめとした、今の9mmが持つ「青さ」はバンドの中で大事な要素になっていくような気がするし、それは「Beautiful Dreamer」も同様。滝のコーラスもギターを弾きながらでも実にはっきりと聴こえるくらいに調子が良さそうだし、かつてこのフェスでも不在になった時があったことがあっただけに滝の存在がそのまま9mmらしさにつながっていることを実感する。
「来年も笑えるように、俺たちの音楽を心の深いところで受け止めてください」
とだけ卓郎が観客に15周年以降も変わらずに進んでいくことを告げると、9mmなりの応援歌「名もなきヒーロー」の
「来週も会いましょう」
というフレーズが来週=2020年での再会を約束すると、ギター3人のサウンドが一気に爆音かつ強靭に変化する「太陽が欲しいだけ」からはさらに加速し、「Discommunication」へ。「DEEP BLUE」の曲で最新のバンドの形を示しながらも、こうしてこのフェスに出演し始めた頃の曲も演奏する。そこにはずっとこの会場で見続けてきたからこその歴史や感慨のようなものが詰まっている。
そしてあっという間のラストは和彦がベースを投げ出すようにしたり、滝がギターを振り回す「Punishment」。この曲が演奏されただけにもう終わりなのかと思ってしまったが、持ち時間的にはまだ7分あった。9mmならあと2曲はできただろうし、かつてのようにEARTH STAGEに出ていたとしたら持ち時間がさらに10分プラスされて17分。あと5曲は聴けた。
動員的にはEARTHに戻るのはかなり厳しい。他の若手バンドの方がそのチャンスも多いだろうから。でも9mmはただEARTHに出ただけじゃなくて、同世代の中で数少ないEARTHのトリまでも経験したバンドだ。その景色を今でも覚えているからこそ、またあのステージに立つという、夢だけで生きられる生きものなんだろう、我々は。
2019年、9mmはアルバムもリリースしたし、6番勝負と銘打った同世代バンドたちとの対バンライブも行った。THE BAWDIESとの男性限定ライブや、台風の影響で最前列のチケットを持っていたのに遅れてしか行けなかった人見記念講堂、そしてthe telephonesとの浜松の2マンでは遠征して9mmファンの方々と9mmの話ができたりと、本当に楽しい1年だった。それはきっとこれからも続いていく。バンドがこれからも続いていくから。
1.ハートに火をつけて
2.反逆のマーチ
3.DEEP BLUE
4.Beautiful Dreamer
5.名もなきヒーロー
6.太陽が欲しいだけ
7.Discmmunication
8.Punishment
13:15〜 04 Limited Sazabys [EARTH STAGE]
もはやこのEARTH STAGEが完全におなじみになっている、フォーリミ。2019年はさいたまスーパーアリーナワンマンにも挑んだりという1年になった。
オリジナルのSEが流れる中でメンバーがいつものように元気良く走ってステージに登場すると、1曲目はいきなりの「swim」で客席は「オイ!オイ!」の大コールが轟き、ダイブ禁止のフェスではあるがサークルは客席の至る所で発生している。ステージではRYU-TA(ギター)がカメラ目線でギターを弾いたりする中、GEN(ボーカル&ベース)の少年のようなハイトーンボイスはそのまま「swim」のメッセージでもある日本の音楽シーンへの光が降り注ぐように響く。
ファストなツービートの「My HERO」からはステージ中央のスクリーンにオリジナルの映像が映し出される。こうした演出をフェスでも使えるというのはライブハウスよりもさらに大きな規模の会場でワンマンをやってきたフォーリミだからこそである。
イントロにライブならではのアレンジが追加された「Chicken race」で踊らせたかと思いきや、高速パンクのショートチューン「message」と、パンク・メロコアと一口に紹介してしまいたくなるが、フォーリミのサウンドはそこに止まらないくらいに幅広い。それはこうしたフェスの短い持ち時間のライブにおいてもよくわかる。
GEN「今日も豪華な出演者が集まってますけど、RYU-TAさんのオススメアクトはありますか?」
RYU-TA「うーんと…」
GEN「RYU-TAさんはハロプロオタクだから、アンジュルムですか?僕はハロプロなら太陽とシスコムーンが好きですけどね(笑)」
という絶妙に同世代しかわからないようなネタは客席の反応が微妙であったが、「fiction」からはハードなサウンドに転じていき、「Montage」「Alien」と続いていくあたりはフェスの中では持ち時間が長いこのフェスだからこそのゾーンと言えるだろう。
2019年は「SEED」というシングルを缶というパッケージでリリースした形態も話題を呼んだが、その中からは「Cycle」を披露。月初に見たREDLINEではこの収録曲は演奏されなかっただけにこうしてライブで聴けるのはもしかしたら貴重な機会なのかもしれない。
GENが夜空を見上げるように幕張メッセの天井を見上げてから演奏された「midnight cruising」から早めの年賀状こと「Letter」とやはりパンクに軸足を置きながらもそのサウンドの幅の広さには何度ライブを見ていても感心してしまうが、GENは2019年を
「上手くいかなかった1年だった。新しい音楽的な引き出しを見つけられたわけでもないし、ああしなければ良かったなって思うこともあるし」
と振り返っていた。それはこうしてフェスの動員力を踏まえたら完売して当然と言えるようなさいたまスーパーアリーナのワンマンがソールドアウトしなかったからというのもあるのかもしれないし(他のアーティストだったらソールドアウトにするくらいの枚数は売れたらしいが)、「SEED」の収録曲がこうしたライブでの定番曲に育てられなかったというのもあるのかもしれない。
しかしながらあくまでライブハウスのパンクバンドとしてこうしてフェスのメインステージに立ち、シンプルなライブになりがちなパンクバンドのライブに映像やレーザーや炎というこの日のライブでもふんだんに使われてきた演出を大胆に取り入れて進化を果たしてきたのは間違いなくフォーリミの功績であるし、主催フェスであるYON FESは今や日本を代表する春フェスの一つになった。
それでもGENは、フォーリミは現状にまだまだ満足していない。それをしっかり口にできて、ただ「1年間ありがとうございました」で終わらないのは本当に真摯なバンドだと思うし、ここにこそフォーリミの人間らしさが表れていると思う。
そんな中でフェスではあまり演奏されない「hello」の
「永久に永久に ちょうどいい空気で
ふわりふわり ちょうどいい温度
絶妙な世界をこのまま」
というフレーズは行きすぎず落ちすぎないというフォーリミの状況を的確過ぎるくらいに表しているし、そんな状況にあるバンドだけでなく観客の未来を打破して進んでいくかのようなKOUHEIのドラムの連打から始まる「Squall」から最後はGENが思いっきり振りかぶるようにしてベースを鳴らし、HIROKAZが客席の左回りのサークルを眺めながらギターを弾く「monolith」で締め。
もしかしたら停滞感があった1年かもしれないが、それはきっと来年以降への布石になるはず。音楽をどう届けるか?という点も含めてこんなにもいろんなことを考えながら活動しているパンクバンドは他にいないと思うから。
1.swim
2.My HERO
3.Chicken race
4.message
5.fiction
6.Montage
7.Alien
8.Cycle
9.midnight cruising
10.Letter
11.hello
12.Squall
13.monolith
14:10〜 TOTALFAT [GALAXY STAGE]
毎年このGALAXY STAGEに出演し、GALAXYの番人の1組的な存在であるTOTALFAT。しかし去年までと違うのは今年Kubotyがバンドを脱退し、3人編成になったことである。したがって3人になってこのフェスに出演するのは初。自分と同様に3人になってから初めてライブを見るという人もたくさんいるはず。
SEが鳴ってメンバーが登場すると、これまでの立ち位置から、Jose(ボーカル&ギター)が下手、Shun(ベース&ボーカル)が上手というトライアングルの立ち位置に変化。なので
「スリーピースバンド、TOTALFATです!」
とJoseが挨拶。その言葉からは本当にスリーピースになったんだなと思うし、最初に演奏されたスリーピースになった直後に配信リリースされた「Give It All」のストレートかつシンプルなパンクサウンドがより一層そう思わせられる。
それは既存の曲においてもそうであり、タオル回しなどのフェスらしいパフォーマンスが繰り広げられる「夏のトカゲ」、ツービートの西海岸メロコア的な「晴天」という曲ではこれまでにKubotyが担っていたハードロックなリードギターのサウンドがなくなったことによって、原曲に比べたらどうしても音が足りなく感じてしまうけれどもそれは新たな3人でのTOTALFATのサウンドになっているということだ。
3人になってからの配信曲第二弾「ALL AGES (Worth a Life)」では左回りのサークルが発生し、「World of Glory」「Phoenix」とこのバンドのメロディアスな部分を全開にした曲が続くのだが、まだ3人になってからわずか2ヶ月とは思えないクオリティなのはさすが生粋のライブバンドである。もうこの2ヶ月は精神と時の部屋で過ごしてきた2ヶ月のような。
Shun「頭がパンクするかと思うような1年だった。でもそういう日々を過ごしてきたことが俺たちの音になる」
とこの1年がやはりこれまでで1番大変な時期だったことを語り、それでもバンドマンとしてそうした出来事すらも音楽にしようとする覚悟も口にすると、「Party Party」で踊らせまくりながら間奏では3人それぞれのソロ回しも入れ、
「俺たちが書いた曲だけど、そのメッセージに自分たち自身が救われている」
と言って最後に演奏されたのは「Place to Try」。バンドが日本語歌詞に挑戦した曲であるが、リリース当時は賛否両論というか否定的な意見の方が多かった。TOTALFATの西海岸的なパンクサウンドには英語歌詞の方が乗りやすいと言われていたし、何より
「君はひとりじゃない」
というあまりにどストレート過ぎる歌詞を綺麗事的に捉えていた人も多かったと思う。そんな歌詞を書くんならパッと聞いただけではわからない英語の方がいいと。
でも結果的にはこの曲が日本語で、このメッセージを持った曲だったからこそ、今残った3人を救った曲になった。そのストレートさは当時のメンバーが思っていたことそのままであり、それは今も変わっていないのである。だからこそその挑戦は間違っていなかったと今ならそう思うことができるし、その
「君はひとりじゃない」
のフレーズの大合唱はそれを証明していたかのようだ。
Joseは最後に
「TOTALFATに出会ってくれてありがとう!」
と言った。元々カッコいいライブをするバンドだし、このフェスやロッキンのパンクな部分を守り抜いてきてくれたバンドである。でも今はそれに加えてその音から「バンドを続けるという覚悟」が滲み出ている。この2ヶ月、本当に大変だったと思うけれど、TOTALFATは大丈夫だと思った。これからも3人で続けていくことができるし、きっともっとカッコいいバンドになるはず。もうこのバンドで生きていくしかないんだから。
1.Give It All
2.夏のトカゲ
3.晴天
4.ALL AGES (Worth a Life)
5.World of Glory
6.Phoenix
7.Party Party
8.Place to Try
15:00〜 amazarashi [COSMO STAGE]
今までamazarashiはトップバッターで出演するのが常だった。紗幕に映像を映したりというライブの手法的にセッティングに時間がかかるから。だから割と毎年のように出演しているこのフェスにおいてもずっとトップバッターとしてこのCOSMO STAGEや、その前はGALAXY STAGEに出ていたのだが、今回は初のトップバッター以外での出演。それは今回はこのステージの前に出ていた出演者がセッティング機材がないアンジュルムだったからということもあるのかもしれない。
気づいたのはトップバッターではない出番の時にはサウンドチェックでメンバーが出てきて曲を演奏するということ。これは実に意外な姿であった。あと一つはCOSMOには入りきらないくらいにたくさんの人が詰めかけていたこと。日本武道館もソールドアウトしたし、もしかしたらこれは来年以降はGALAXYに戻る可能性もあるかもしれない。
時間になるとステージに張られた紗幕にバンドロゴが映し出され、その瞬間にすでにスタンバイしていたバンドの演奏が始まる。紗幕には次々に歌詞が映し出される「ワードプロセッサー」からスタート。「言葉」という日本武道館あたりからのamazarashiのライブにおけるキーワードとしては実に大事なオープニング曲である。
「青森から来ました、amazarashiです!」
と秋田ひろむ(ボーカル&ギター)によるおなじみの挨拶。井手上誠(ギター)らバンドメンバーは変わらないが、近年はキーボードがamazarashiのメンバーとして秋田とともに名前を連ねている豊川真奈美ではない。いずれまたステージでその姿を見れる日は来るのだろうか。
轟音ギターロックの「ヨクト」、おなじみのマリア像を思わせる映像による「性善説」というやや意外な選曲(特に「ヨクト」は)となったのはワンマンのように曲と曲を繋げることで一つの物語を描く必要のない持ち時間が短いフェスだからということもあるだろう。
しかしオールスタンディングのフェスだからこそ、観客のリアクションは実にダイレクトだ。曲が終わった後の拍手の大きさや歓声などは基本的に指定席でのライブが多くなっているワンマンでは感じることができないものだ。
音源の「検閲済みver.」では言葉が隠されていた(それが日本武道館ワンマンで明かされるというストーリーは今思い出しても感動してしまう)「独白」はその隠された言葉が明かされていくというただ歌詞が映し出されるのとは違った形の映像として映し出され、
「言葉を取り戻せ」
という秋田の絶唱にも似た凄まじいボーカルが響き渡る。この秋田のボーカルの凄みは間違いなく年々進化している。
そして最後に演奏されたのは2019年のツアーで新曲として披露され、豪華な出演者によるMVも話題になった「未来になれなかったあの夜に」。
この曲や「独白」、さらには「リビングデッド」や「月曜日」という近年リリースされてきた曲たちがアルバムという形でまた新しい物語を生み出すのはおそらく2020年だろう。それを引っ提げたツアーでは我々にどんな新しい景色を見せてくれたり、体験させてくれたりするのだろうか。持ち時間は短くても、ワンマンの本数がそこまで多くはないだけに、このフェスで毎年1年の最後にライブを見れるのは本当に嬉しい。
リハ.季節は次々死んでいく
リハ.たられば
1.ワードプロセッサー
2.ヨクト
3.性善説
4.独白
5.未来になれなかったあの夜に
その後にGALAXY STAGEでACIDMANを
灰色の街
ALMA
MEMORIES
ある証明
という後半だけ。「ALMA」でスマホライトがまるで星空のように輝く美しさや、そもそものこのバンドのライブの凄さ。いろんなものが、遠くへ消えていくし、形を変えてしまうけど、このバンドがカッコいいという事実と、大木伸夫(ボーカル&ギター)がフェスの場でもブラックホールが撮影されたという話を嬉しそうにするというのはずっと変わらない。近年はEARTHで超人気バンドが出演する裏でかなり厳しい動員だったりしたこともあったが、まだまだこのバンドはGALAXYで戦える。
16:20〜 ストレイテナー [GALAXY STAGE]
ACIDMANからストレイテナーへというGALAXY STAGEのバトンの繋がり方にロッキンオンなりのこの世代、それはつまりこのフェスを長い年月支えてきてくれたバンドへのリスペクトを感じさせる。
2019年リリースのミニアルバム「Blank Map」の1曲目でありSEで使う前提として作られたであろう「STNR Rock and Roll」で4人がステージに登場すると、いきなりの「Melodic Storm」で大合唱を巻き起こす。この曲を最後にやらなくてもいいくらいの曲があるというのがさすがである。さらにこの時期に聴くと冬であることを実感しながらも体は熱くなる「冬の太陽」と続き、「KILLER TUNE」はこれまでに何度となくバージョンやアレンジを変えてきた曲であるが、さらにシンプルなビートやリズムにアレンジされ、狂熱的に踊らせるというよりは年齢を重ねたからこそのダンサブルな形になっている。こうして自分たちの曲を絶えず進化・変化させ続けているというのはライブに行くたびに新しい発見をもたらしてくれる。ストレイテナーのライブはいつもそれを感じさせてくれる。
ホリエアツシ(ボーカル&ギター&キーボード)が2019年を同世代のバンドとともに駆け抜けた1年だったということを語ると、その喋る姿の後ろでナカヤマシンペイ(ドラム)が自身もスクリーンに映ろうとするあたりが実に今のこのバンドの関係性の良さを感じさせてくれるが、ホリエの言葉通りにたくさんのライブやツアーを経てきたこともあり、バンドの演奏も実に安定感に満ちている。
それはバンドの演奏だけでなくホリエのボーカルもそうであるということを感じさせてくれるバラード「灯り」は今やストレイテナーにとって欠かすことのできない曲になっている。
そして同世代バンドたちと過ごした青春時代を回顧するかのような「吉祥寺」もまた新たなストレイテナーのアンセムになってきているが、2019年の夏も様々な場所で聴いてきた「シーグラス」からは再びアッパーな演奏に振り切り、キャッチーな曲でありながらもゴリゴリのベースを弾くひなっちの笑顔も映える中で最後に演奏されたのはメンバーも観客も飛び跳ねまくる「ROCKSTEADY」。
OJこと大山純がステージ端まで歩いていってカメラ目線でギターを弾く姿からは、14年前にこのステージでトリをやった時にはほとんど喋ることや笑顔を見せることがなかった(「トリをやれて嬉しい」とは言っていた)このバンドが確かに年齢や経験を重ねてきたことを感じさせるし、その姿は間違いなくかつてよりもああいう大人になりたいなと思わせてくれる。
2019年も日比谷野音ワンマンなどをはじめとしていろんな場所でこのバンドのライブを見ることができた。アジカンとELLEGARDENと回ったNANA-IRO ELECTRIC TOURはこのバンドがいなかったら成立しなかったものだし、編成も含めて変わり続けてきたこのバンドの独特の存在感を感じさせてくれた。2020年代にはどんな音楽や活動で我々を驚かせてくれるのだろうか。
1.Melodic Storm
2.冬の太陽
3.KILLER TUNE
4.Braver
5.灯り
6.吉祥寺
7.シーグラス
8.ROCKSTEADY
17:25〜 夜の本気ダンス [GALAXY STAGE]
18/19の出番が年明け後のこのGALAXY STAGEだっただけに、1年で2回もGALAXY STAGEに立つという実に珍しい経験をすることになった、夜の本気ダンス。なので今回は久しぶりにまだ夜とは呼べないような時間での出演となる。
おなじみ「ロシアのビッグマフ」のSEでメンバーが登場すると、米田貴紀(ボーカル&ギター)が
「幕張!クレイジーに踊れますか!」
と挨拶すると「Crazy Dancer」で初っぱなから踊らせまくると、コーラス部分での大合唱もしっかりと響く。さらには2019年リリースのアルバム「Fetish」のリード曲である「Sweet Revolution」のキャッチーなメロディが満員のGALAXY STAGEの中に響き渡っていく。
インタビューで
「SUPERCARの「White Surf Style.5」をイメージして作った」
と言っていた部分は西田一紀のギターのフレーズから微かに感じることができるけれども、やはり夜ダンなりのダンスミュージックのポップサイドに感じることができるくらいにどんな音楽でさえもこのバンドのものにすることができるということを示した「Magical Feeling」を演奏すると、もはやこのフェスの名物と言っていい鈴鹿秋斗(ドラム)のMC。
「2019年はラブソングが強いなと思った1年でした。back numberとかMy Hair is Badを聴いてたりして。でも俺たちにもラブソングあるから!俺たちのラブソングを受け取ってくれ!」
と言って演奏されたのは「fuckin’ so tired」という何をどう聴いたらラブソングになるんだという曲。そうして誰しもの心の中でツッコミを入れさせるあたりはさすがであるが、この曲からは曲と曲との繋ぎをライブならではのアレンジを施してスムーズに演奏して見せるのだが、同じようなBPMにして繋ぐのではなく大胆にテンポを落としても繋がるようにしているのはこのバンドの狂騒的なダンスロックの部分だけではない持ち味を感じさせる。
とはいえ「Take it back」ではMVの通りにアッパーに踊らせるようにリズムの起伏を描くのだが、「Movin’」では音源でCreepy NutsのR-指定をフィーチャーしているラップ部分を鈴鹿がドラムを叩きながら披露するというのも2019年に獲得した大きな武器である。
鈴鹿が相変わらず
「2019年もラブソングを作って…」
と話していると米田が
「ちょっといいですか?さっきからラブソングって言ってるけど、曲を作ってるのは僕です」
と突っ込まれ、マイケル(ベース)に
「何にも言えない顔になってるやん!(笑)」
とさらに突っ込まれることに。
結局のところラブソングなのかどうかはわからなくなってしまったが、「WHERE?」からラストは米田が大きくジャンプしたりと誰よりも自由に踊りまくった「TAKE MY HAND」へ。演奏が終わると鈴鹿は
「来年はマイヘアみたいなラブソング作るからな!マイヘア大好き!(笑)」
と最後までラブソングと口にしていた。
そこまで大きく規模を広げたりしたわけではないが、夜の本気ダンスは2019年に飛躍したバンドの1組だと思う。それはやはり「Fetish」という過去最高にこのバンドのメロディアスな部分が感じられるようになったアルバムを生み出すことができたから。もちろんダンスロックというものとは一生向き合っていくバンドだと思っているが、これからもっとそこだけではない広いところに飛び出して欲しい。
リハ.LOVE CONNECTION
1.Crazy Dancer
2.Sweet Revolution
3.Magical Feeling
4.fuckin’ so tired
5.Take it back
6.Movin’
7.WHERE?
8.TAKE MY HAND
18:15〜 MAN WITH A MISSION [EARTH STAGE]
2019年は改めてスタジアム規模のバンドであるということを示す年になった、MAN WITH A MISSION。年内最後のライブがこのライブとなる。
両手を高く挙げる観客に迎えられてメンバーが登場すると、同期のサウンドが会場に流れてコーラスの合唱が響くと「Raise your flag」でスタート。そのままDJサンタモニカに合わせて観客が踊りまくる「Get Off of My Way」、2019年リリースの「Dark Crow」とアッパーな曲を連発していくのだが、ジャン・ケン・ジョニー(ボーカル&ギター)もトーキョー・タナカ(ボーカル)もその歌声に気合いが漲っている。それはやはり年内最後のライブということもあるのだろう。
TAKUMA(10-FEET)こそ登場しなかったものの、近未来的な映像とのコラボレーションがあった「database」、サビで一気にアッパーに突き抜けていく「Take Me Under」と続くと、2019年は新しい時代が始まった年としてスペシャルゲストのシンガーmiletを招いて披露されたのは「Dark Crow」のカップリングに収録されている「Reiwa」。miletの透き通りながらも溢れるような声量、さらには英語の発音の素晴らしさには驚いてしまうし、こんな凄いシンガーを招いた曲をカップリングに入れたマンウィズ側も凄い。何よりもメンバーと全く顔を合わせたりしなくてもいいくらいにmiletの中にこの曲が染み込んでいるというのが印象的であった。
大合唱を巻き起こした「Emotions」から、さらにスペシャルゲストとしてステージに登場したのは東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊。もちろん曲はスカパラとのコラボ曲である「Freak It!」。打ち込みではない生のホーンのサウンドは迫力満点であるが、そもそもスカパラはマキシマム ザ ホルモンの代打としてこの日に出演しているだけに、そんな立場でもこうしてマンウィズのゲストにも出てきてコラボ曲も演奏できるというのは本当に素晴らしい姿勢である。
そんな年内最後のライブならではの特別感溢れるライブは2019年を彩った名バラード「Remember Me」を美しく響かせると、カミカゼ・ボーイ(ベース)を含めて各メンバーたちが左右に伸びる花道に駆け出して行って演奏し、観客も踊りまくった「FLY AGAIN」。
2019年最後ということは、この日はこのバンドにとって2010年代最後のライブだったということ。2020年に10周年を迎えるこのバンドの歴史はそのまま2010年代の日本のロックシーンの歴史になった。それをきっとこのバンドは2020年代は世界にまで広げていこうとしている。インタビューでは世界のロックバンドの減少に寂しい思いを感じていることを語っているジャン・ケン・ジョニーはきっとこのバンドの存在をもってそこを変えようとしている。
1.Raise your frag
2.Get Off of My Way
3.Dark Crow
4.database
5.Take Me Under
6.Reiwa feat.milet
7.Emotions
8.Freak It! feat.スカパラホーンズ
9.Remember Me
10.FLY AGAIN
その後にCOSMO STAGEでTHE BACK HORNを
声
シンフォニア
果てなき冒険者
の3曲だけ見る。年末にかけてライブを何本かキャンセルしてしまった山田将司の喉の状態は少しというかかなり不安に感じてしまうものであったが、普通にCOSMOは埋まっていたし、また来年からはGALAXYで見たい。このフェス創生時からあのステージに立ち続けてきたバンドだし、そこで年越しも担当したことがあるバンドだから。
19:30〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION [EARTH STAGE]
この日のトリはアジカン。マンウィズというスタジアムバンドが出ている日でありながらもこうしてトリを務めることができている。
時間になって会場が暗転すると場内には「クロックワーク」のイントロ的なSEが流れてかなり髪がさっぱりしたサポートメンバーのシモリョー(キーボード)を含めたメンバーが登場すると、そのままSEから繋がるように「クロックワーク」の演奏を始めると、ライブでのアレンジがそのまま再録バージョンとなった「Re:Re:」、さらにはゴッチ(ボーカル&ギター)のボーカルが実に伸びやかに響く「Standard」とライブでの定番曲が続いていく。
そのゴッチの挨拶から喜多建介が前に出てきてギターソロを決める「荒野を歩け」、このフェスに自身がプロデュースする飲食店舗が出店しており、料理人的なイメージが2019年にさらに強くなった伊地知潔の祭囃子的なドラムから始まる「今を生きて」と続き、さらには「君の街まで」に続いてこうしてフェスでやるのは実にレアな「暗号のワルツ」までも演奏される。なぜ今になってこの曲をこのフェスでやったのかはわからないが、たくさんの観客が腕を上げてこの曲が演奏されたことを歓迎していた。
「サイレン」ではシモリョーがコーラスを務めることによってシングルバージョンとカップリングバージョンのマッシュアップバージョンとして演奏することができるが、ゴッチは
「潔の出してる店とか料理本が俺のソロよりはるかに人気があってムカつく(笑)
だからムカつきすぎて潔の顔がルーロー飯に見えてきた(笑)」
と潔の料理に嫉妬しながらも、国内のライブで演奏されるのは2年以上ぶり(もはや演奏されることはないと思って曲の存在を忘れてしまい気味になる)という「ブラッドサーキュレーター」というある意味ではシングル曲であるにも関わらず「暗号のワルツ」以上にレアな選曲で驚かせたりしつつも、誰もが知る名曲「ソラニン」へ。2010年にリリースされ、2000年代の日本のロックシーンを作ったアジカンが新たなディケイドの始まりを告げた曲がこの2010年代の最後に演奏されているということにしみじみしてしまうし、どうしても2010年代のこと、それはそのままアジカンとともに駆け抜けてきた10年間のことを思い起こさせる。こうしたフェスで、ライブハウスで、ホールで、スタジアムで。本当にアジカンを様々な場所で見てきた10年間だった。
そして「リライト」では間奏でおなじみのコール&レスポンスパートになるのだが、ゴッチはギターを置いてステージ上手側の通路に進むと、手すりに肘をついて
「このまま年越しまでこのコール&レスポンスしてたら怒られるかな?(笑)」
と話し始めるのだが、その姿だけで笑いが起こってしまうくらいに面白い体制になっている。
「昔、このフェスで時間オーバーしたら終わった後にマネージャーがめちゃくちゃ怒られてて(笑)
ファミリーみたいな事務所だからそこで大人が怒られてるのを見ると結構凹むよ(笑)
でもこの後の「リライトして〜」でみんなで歌って2010年代の嫌なことを全部リライトしよう。なんか残ったらZOZO TOWNが回収してくれるよ(笑)」
といつにも増してゴッチのMCは笑いを取っていたが、だからこそサビでの爆発力はいつにも増して素晴らしいものがあった。
そんなライブを締め括るのは近年のライブでは必ず最後に演奏している「ボーイズ&ガールズ」。2000年代の日本のロックシーンを作り、2010年代もこうして最も大きなステージに立ち続けてきたアジカンが
「はじまったばかり」
と歌う。まだまだこれから2020年代になってもアジカンでやれること、見れる景色が確かにある。このフェスで見れるアジカンのライブはいつもそれを感じさせてくれるが、2010年代最後のアジカンのライブはより強くそれを感じさせるものになった。
このフェスの05/06でアジカンは初めてトリを務めた。あれから14年。横を見ると同世代のバンドには居なくなってしまったり、このフェスの規模のステージには立てなくなってしまったり、かつてはアジカンと同じようにメインステージに立っていながらも今はステージが小さくなったバンドも多い。でもアジカンは新しい挑戦をしながら今もEARTHのトリを務めている。それがどんなに凄いことか。ただあの頃は闘っていた印象が強かったが、今は全てのことを楽しんでるように見える。だからこれからもアジカンはずっと続いてくれるような気がしている。まだ始まったばかりだから。
1.クロックワーク
2.Re:Re:
3.Standard
4.荒野を歩け
5.今を生きて
6.君の街まで
7.暗号のワルツ
8.サイレン
9.ブラッドサーキュレーター
10.ソラニン
11.リライト
12.ボーイズ&ガールズ
文 ソノダマン