前々作『青春のエキサイトメント』は自分の中の「売れたい」だとか「知ってほしい」という貪欲さが表れたアルバム、前作『瞬間的シックスセンス』はブレイクスルーのギラギラ感が表れたアルバムという感じで、人間の誰しもが持っている俗的な部分が音楽の中に見えていて、それはもちろん悪いことではないし、あいみょんの人間臭さが見えてすごくよかったんだけど、今作はそういった我執がまったく見えなくなっています。
変に力が入ってなくて、一番心地いいアルバムです。
BGMのように、そこにあることが自然な音楽。常に鳴っていても溶け込めてしまう音楽。加湿器みたいに、目には見えないけれど空間をちょっと良くしてくれる音楽。
世間で「好きな曲ランキング」みたいなものを取れば『瞬間的シックスセンス』の収録曲が上位を占めるんだろうけれど、この先自分が80歳、90歳になってもこのアルバムのことは愛し続けられるだろうなと思いました。
文 高橋数菜
爆発的なブレイクを果たしてお茶の間にまで進出したアーティストのメジャー3枚目のアルバムとなると、どうしてもマンネリというか、どんどん守りに入ったものになっていきやすい。
それに当てはまる存在でしかないあいみょんのメジャー3rdアルバム「おいしいパスタがあると聞いて」はタイアップ曲を多数収録していながらも、そのアルバムタイトルと
「愛は全てを解決しない
金があれば何でもできるかもしれない
余裕のある生き方がしたいしたいしたい
でも鐘のなる方へは行かないぞ」
という「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」のフレーズは、これからもあいみょんが耳障りの良いJ-POPラブソングだけを量産するシンガーにはならないことを宣言しているし、このアルバムの収録曲の振れ幅の大きさは見事にそれを実践している。これからもあいみょんへの信頼が揺らがないことに安心感すら抱かせてくれるアルバム。
文 ソノダマン