6年半前にリリースされた「光の中に立っていてね」「BEACH」という2枚のアルバムは呪いにも似た自身の青春の終わりと、そこからの解放のアルバムだった。ずっと見てきた、ずっと続くと思っていたあの4人の銀杏BOYZとしての最後のアルバムであり、冒頭からのノイズにまみれたサウンドは2005年にリリースされた最初の2枚のアルバムとはバンドが全く違う地平に立っていることが明確だったからだ。
今作に至るまでの6年半の間に峯田和伸は信じられないくらいに存在が市民権を獲得した。NHKの朝ドラ、地上波のドラマでのまさかの石原さとみの相手役、ダウンタウンの番組への出演…銀杏BOYZの存在を知らない人も峯田和伸という人間の存在を知るくらいに峯田はテレビの中でおなじみの存在になった。
そんな峯田の存在が過去最高に認知された状態でリリースされた、この6年半ぶりのアルバム「ねえみんな大好きだよ」で初めて銀杏BOYZの音楽に触れるという人も多いはずだ。そのアルバムの冒頭はノイズも強いが、サウンドとしては完全にパンク。GOING STEADY「さくらの唄」を初めて聞いた時の「アホンダラー!」という峯田の叫びに脳天をバットでフルスイングされたような、今も忘れることができない感覚。それを思い出した。今作で初めて銀杏BOYZの音楽に初めて触れる人もきっとその感覚を体験できるはずだ。
でもそれは過去の焼き直しでも再生産でもない、今の銀杏BOYZだからこそ作れた曲でありアルバムだ。「ぽあだむ」の先を描くようなアレンジが施された「GOD SAVE THE わーるど」の弾き語りで披露されていた時とは全く違う歌詞はそれを最も強く感じさせてくれる。
だからこそ今でも銀杏BOYZの音楽にワクワクできる。それは「さくらの唄」に衝撃を受けた時の自分自身への何よりも強い肯定になる。お前は大丈夫だ、お前は間違ってない。そう声をかけてやりたくなる。だってバンドが変わって、メンバーもいなくなった今でも峯田和伸の作る音楽に生かされているのだから。こんなアルバムが聴けるんだからまだまだ、生きたくってさ。