メジャーに移籍してから3枚目のアルバム。ほぼ1年に1枚くらいのペースでアルバムをリリースしてきたバンドであるし、これまでの2枚ですでにバンドの持っている幅の広さというものもしっかり打ち出してきた。そんな3枚目というタイミングでsumikaがこれほど素晴らしいアルバムを作ってくるとは想定していなかった。
先行リリースされた「Shake & Shake」や「Jasmine」という曲からの一瞬でその場を塗り替えてしまうようなアンセム感はアルバムへの期待を高まらせていたものでもあるが、片岡健太が
「一度バンドを終わらせるつもりで作った」
と制作背景をインタビューで語っていたように、確かに「Chime」も「AMUSIC」も良いアルバムだったが、このままの流れでアルバムをリリースしても「ホールツアーを回れるくらいのバンド」として落ち着いてしまうという危機感もあったんじゃないかと思う。そこだけにとどまることのない勝負の3作目。その勝負にバンドは曲、音楽の力で勝った。それはこのアルバムには優等生的なsumikaのイメージだけではない、「Babel」や「言葉と心」という曲があることによって喜怒哀楽全ての感情を1枚のアルバムで体現しているからであり、だからこそ聴き手がどんな感情の時にも寄り添ってくれたり背中を叩いてくれたりするアルバムになっているということだ。
そんな勝負に勝ったアルバムを作ったバンドは来年5月に横浜スタジアムでワンマンを行う。その規模で響かせるべき音楽がこのアルバムだということ。そのワンマンを経てsumikaが日本を代表するモンスターバンドになった時に、そこに達した最大の理由がこのアルバムだったと言えるような名盤がついに生まれた。
/ 2023/06/16