*『DOOR』と『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』は、僕の中では2枚組のファーストアルバムである。よって、この2枚には同じレビューが掲載されているが、そういう意図であることを理解いただけたら嬉しい。
発売当時はこのアルバムの良さがまったくわからなかった。ゴイステとぜんぜん違う、頭の悪い音楽。それが銀杏BOYZに対する感想だった。
先日、フジロックの生配信で銀杏BOYZの姿を目にし、稲妻が走った。「みんなが『このアルバム最高!』っていうのはこういうことだったのか!!!!!!」みたいな。
このアルバムが凄いのは、メンバーの人間性や魂がむき出しになっているところにある、と思う。人間として生まれた以上、一定の倫理観は常に持っているものだし、ハメを外せだとか無礼講だとかと言われてもその場でドラッグやったり暴力をふるったりSEXしたりできる人はいないと思う。それは日本人として生まれて、一定の水準の教育を受けて、ある意味矯正されて僕たちはこの社会に出荷されているわけだ。
しかし銀杏BOYZの音楽には、そういった道徳心がまったくない。「無礼講だ!」といわれたら気に入らないやつを殴っちゃうような圧倒的ででたらめなパワーがある。
「こんな生き方していいんだ」「こんな音楽を発表していいんだ」「こんなに自分をさらけ出していいんだ」。無茶苦茶できったない演奏の内側に秘められている人生の横道を提示してくれるところや自由な生き方を肯定してくれるところにアンテナが引っかかったんだ、とわかった。ようやく。2019年の今になって。
といっても、このアルバムがぶっ刺さるのは、限られた層だと思う。くたびれた中年のサラリーマンは「元気だね」くらいにしか思わないだろうし、音楽愛好家にはノイズにしか聴こえないだろう。でも僕は、リリースから十余年を経て、ようやくこの作品の真髄が理解できた。あなたにもそんな音楽が見つかればいいなと思う。