サカナクションがブレイクを果たしたきっかけとなる“アルクアラウンド”を受けてリリースされたアルバム。
シングルは“アルクアラウンド”の一曲のみ。
先日、山口一郎本人がこのアルバムの解説をしており、「周囲からのプレッシャーが嫌だった」「“アルクアラウンド”みたいな曲はできない」、
そして「挫折のアルバム」だと語っていた。
当時のインタビューでも、「想定してた数字よりぜんぜん売れなかった」と何度も述べている。
『GO TO THE FUTURE』は同一BPM内での揺らぎを、
『NIGHT FISHING』では音色での揺らぎをと、
サカナクションは明確な狙いをもってアルバムを制作してきた。
では、このアルバムにはどんな狙いを持たせたのだろうか。
『kikUUiki』というタイトルは、海水と淡水が交わる水域「汽水域」から創られた造語「汽空域」からきている。
「汽空域」という言葉には「本来相容れないものが混ざり合うところ」という意味が込められているという。
「汽水域」というのは、海に流れ込んでいる河口をイメージしていただくとわかりやすいと思う。
川の水と海の水が混ざり合う場所。ここは魚が集まるポイントで、釣り好きにとっては一般的な言葉である。
気水域というのはあまり広くなく、水がきれいだと淡水と海水の境目がはっきりと目視できるところもある。
釣りをしない人にはあまり耳馴染みのない言葉だと思う。
サカナクションは『シンシロ』の制作中に上京してきたが、北海道と東京の交わりが『kikUUiki』(汽空域)というイメージのひとつの要素だったのだと思う。
そして“アルクアラウンド”と他の楽曲群も『kikUUiki』(汽空域)だったのだと思う。
“アルクアラウンド”はほかの曲とは相容れない。
“目が明く藍色”もほかの曲と相容れない。
“表参道26時”も相容れない。
“Klee”も相容れない。
“21.1”はそもそも 「version21.1」というイベントの曲だ。
世間が求めているのは“アルクアラウンド”であり、『kikUUiki』ではなかった。
言ってしまえばそれだけのことだが、サカナクションも楽曲郡が相容れないとわかっていたから『kikUUiki』というタイトルをつけた。
サカナクションは自分たちのリスナーを「センスがいい」と表現するが、センスがいい人たちにしか混ざりあわなかった。それこそ気水域のように。