先行配信された「インフェルノ」を聴いた時に「これは!?」と思った。メジャーデビュー以降は明確な意識を持って自分たちのサウンドを変化させてきたMrs. GREEN APPLEがまるでメジャーデビュー期やインディーズ期のようなギターロックを鳴らしているからである。
その「インフェルノ」を含めた4枚目のフルアルバムでMrs. GREEN APPLEはそもそも大森元貴が10代の頃から持っていた死生観を強く感じさせるギターロックに回帰した。もちろんこれまでの変化と進化を経てきたからこそのストリングスやホーンのサウンドを取り入れたアレンジも施されているが、かつてメジャー1stアルバム「Twelve」収録の「パブリック」を聴いた時のような、人間という存在そのものと向き合わされるような切実さがこのアルバムを貫くトーンとなっている。
その大森の人間としての芯や軸が変わっていないからこそ、ミセスはどこにだって行けるし、こうしてどこかに行ったことによって得た経験を加えた姿となって戻ってくることもできる。きっとこれからもそうして予想だにしない方向へ走り出したり、またこうして自分たちの軸を確認したりするのだろう。それはミュージカルのようなステージを作ってみせたかと思ったら、演出もなしで小箱を回るというバンドのみの力を再確認するようなツアーを行ったりというライブにも現れている。そしてこのアルバムに収録された「青と夏」「僕のこと」という2曲によって、このバンドは着実に、確実に国民的バンドという位置に王手をかけている。