/ 2020/03/01
リリース時と今とではこうしてアルバムのことについて書くことが全く変わってしまった1枚。それはもちろんNICO Touches the Wallsが11月に活動終了を発表したからである。
光村龍哉が「いつか作りたかったアルバム」と語っていた通り、NICO唯一の先行シングル曲が収録されていないアルバム。それは求められるものよりも自分たちの表現欲求に突き動かされてできたアルバムということであるが、それゆえにどこかインディーズ時代のこのバンドを思い起こさせるし、どんなにやりたいように作っても根のメロディメーカーの部分は決して失われておらず、自己満足的な作品でも決してない。NICOの音楽に触れたことがない人にも堂々と最初に渡せる1枚となっている。
しかし。もしこのアルバムを作ったことによってバンドが「やりきった」と感じてしまったのだとしたら。それがバンドの終わりに繋がってしまったのだとしたら。終わってしまった今となるとそんなことも頭をよぎってしまう。もしかしたらこのアルバムが出来なければNICOはまだ今まで通りに続いていたんじゃないかと。
「どうして夢を見るの?」と問いかけるのではなくて「まっさらな夢を見させてよ」と願っていた方が幸せだったんじゃないか。聴いてしまうとそんなことを考えてしまうだけに、名盤でありながらも今年リリースされた中で最も聴けなくなってしまったアルバム。
関連記事
PANDORA go!go!vanillas
go!go!vanillasの歴史はサウンドの広がりの歴史だと思っている。ロックンロールバンドとしてシーンに登場しながらも、世界中のありとあらゆる音楽を聴き、オフにはレコード屋に行って古今東西のレコー …続きを見る
Convicted Cryptic Slaughter
ハードコアとメタルが融合した80年代クロスオーヴァーの中でも異質中の異質なCryptic Slaughterの1st。速いという次元を余裕で超えているドラミングはもはやギャグレベル。しかもそれほどテク …続きを見る
青春のエキサイトメント あいみょん
ネットでは、新譜『瞬間的シックスセンス』に「毒がなくなった」、「個性が薄くなった」という感想が見受けられます。確かに彼らの言いたいことはわかる。でも、この頃のあいみょんは影響を受けたアーティストの模倣 …続きを見る
Chilli Beans. Chilli Beans.
デビューフルアルバムであるだけに、最初はどんなもんだろうかと思って聴いてみたが、確かにデビューアルバムだからこそのフレッシュさもありながらも、まるで5枚くらいアルバムをリリースして、その全てで毎回サウ …続きを見る