/ 2020/05/01
かっこいいバンドであるということはデビューミニアルバムの「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」リリース時からわかっていたが、ことフルアルバムとなるとこれまでどこか物足りないような印象をTHE ORAL CIGARETTESに対しては抱いていた。それはこれまでにリリースしてきたフルアルバムが4枚すべて10曲入りという内容だったことと無関係ではない。
もちろん曲数や収録時間が長ければいいというものではないが、これまではどこか、緊迫した投手戦であるがゆえに2時間くらいで決着がつくような野球の試合のようであった。
しかし5枚目の今作は初の15曲入り。それによって展開に起伏が生まれているし、それは従来のバンドサウンドのみならずゴスペルまでも取り入れた音楽性の広さがあるからこそより生きるものでもある。時には山中拓也がライブで全くギターを持たずに歌う姿や先行配信曲の変化・進化のスピードの速さに寂しさを覚えたこともあったが、それもすべてはこのアルバムに向かっていたと考えるとすべて納得がいく。
ラスト2曲の「The Given」「Slowly but surely I go on」は様々なドラマや展開を生み出してきた試合の最後の9回裏を不動のストッパーが3者連続三振で完璧に締めるような美しさ。出会った時の「かっこいい」というだけのバンドではなくなった。オーラルはやはり「すごい」バンドだった。それを証明するかのような新世界がここに。
関連記事
FOREVER DAZE RADWIMPS
何かとRADWIMPSのファンとしては心中穏やかではいられない1年だったが、そんな中でもRADWIMPSはコロナ禍になったことを受けた楽曲を精力的にリリースしてきた。その中にはミュージックステーション …続きを見る
Sheer Heart Attack Queen
このアルバムも筆者が生まれる何年も前の作品だし、ましてや当時のライブでの演奏は映像でしか観たことがない。
しかし、現在の最前線の新譜に刺激を受けることと同様に、数十年前の作品を改めて聴き、新鮮味や衝 …続きを見る
YOU NEED FREEDOM TO BE YOU 9mm Parabellum Bullet
正直言ってライブでリリース前の「カタルシス」を聴いた時は「ちょっと難解な曲過ぎないですかね…?」と思っていたし、だからこそその時に製作中だと言っていたこのアルバムがどんな内容になるのか全く予想がつかな …続きを見る
millions of oblivion THE PINBALLS
このベストディスクの記事を書くタイミングの直前、12月16日にリリースされた、2020年のラスボス的なアルバム。
THE PINBALLSは「とりあえず衝動と激しさ」の音楽というイメージを持たれがち …続きを見る
沈香学 ずっと真夜中でいいのに。
マジで今のずっと真夜中でいいのに。のライブは今までにも増してとんでもないことになっている。それは「チェンソーマン」のエンディングの1曲として話題になった「残機」や、VtuberラッパーのMori Ca …続きを見る
乙女新党 第二幕 ~旅立ちのうた~ 乙女新党
2016年に解散したアイドルグループ・乙女新党のセカンドアルバム。というかラストアルバム。
04『NとS』が僕的に一番良かった。歌詞がちょっと百合っぽく、キラキラなアイドルソング。
これだけ繰り返 …続きを見る