/ 2020/05/01
かっこいいバンドであるということはデビューミニアルバムの「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」リリース時からわかっていたが、ことフルアルバムとなるとこれまでどこか物足りないような印象をTHE ORAL CIGARETTESに対しては抱いていた。それはこれまでにリリースしてきたフルアルバムが4枚すべて10曲入りという内容だったことと無関係ではない。
もちろん曲数や収録時間が長ければいいというものではないが、これまではどこか、緊迫した投手戦であるがゆえに2時間くらいで決着がつくような野球の試合のようであった。
しかし5枚目の今作は初の15曲入り。それによって展開に起伏が生まれているし、それは従来のバンドサウンドのみならずゴスペルまでも取り入れた音楽性の広さがあるからこそより生きるものでもある。時には山中拓也がライブで全くギターを持たずに歌う姿や先行配信曲の変化・進化のスピードの速さに寂しさを覚えたこともあったが、それもすべてはこのアルバムに向かっていたと考えるとすべて納得がいく。
ラスト2曲の「The Given」「Slowly but surely I go on」は様々なドラマや展開を生み出してきた試合の最後の9回裏を不動のストッパーが3者連続三振で完璧に締めるような美しさ。出会った時の「かっこいい」というだけのバンドではなくなった。オーラルはやはり「すごい」バンドだった。それを証明するかのような新世界がここに。
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