もう今から10年くらい前にフェスでflumpoolのライブを始めて見た。当時「花になれ」のヒットによってすでに若手バンドの中では頭一つ抜けた存在になっていたが、ライブは実に物足りないというか淡々としているというか、ロックバンドとしての音の強さやそこに込められた意志を感じられるようなものではなくて、それ以来フェスに出てもなかなかライブを見ようとは思えなくなっていた。
しかし近年のこのバンドにはいろいろなことがあったというのはニュースやらインタビューやらを見て知っていた。山村隆太がドラマに出演して賛否両論だったこともあったが、一番大きいのはその山村の喉の不調だろう。この「Real」はその不調を経ての復帰作であり、デビューアルバムの「Unreal」と対になっているタイトルとジャケットである。
実際にアルバムを聴いてみると、ストリングスなどのバンド以外のサウンドを取り入れながら、いわゆるflumpoolのイメージとして強いさわやかなポップさを感じさせる曲はあまりない。新しく生まれ変わったかのように、ドロドロした内面も包み隠さず、コーティングすることもなくさらけ出している。
そんな中で異彩を放つタイトルが「ほうれん草のソテー」。これは結成時にメンバーが集まって話し合っていたファミレスの一番安いメニューだという。この曲を聴いて、彼らが自分と同年代であるということを思いだした。境遇は異なれど、もうファミレスに行って一番安いメニューで何時間も粘るということはお互いにしないだろう。でもこの曲を作れる、歌えるということはその時代からバンドの形が変わっていないことの証拠でもある。止まらざるを得なかった時間もあったとはいえ、同年代のバンドで変わらない形で続いているバンドなんてもうほとんどいない。このバンドと交流が深かった4人組のバンドも去年いなくなったしまった。
聴いているとそんなことが頭に浮かんでくるからこそ、今の彼らがどんなライブをするのかも見てみたくなる。きっと自分が始めて見たときよりもずっと強いバンドになっているだろうから。
/ 2020/05/31