Peach Peach Peach、メディア初インタビューである。Hiroshi Kawseki(NANANINE)と
Daisuke Nishio(ALOHA)の2人組ユニットで、コロナ禍真っ只中の2021年結成。YouTubeで公開された唯一のMV『KIDZ』は7万再生を突破。ライブも積極的に行っている。にも関わらずサブスクでは1曲も配信されておらず、CDもリリースされていない。ようやく今年の7月に2曲入りの7インチEPがリリースされた。
NANANINEもALOHAも音楽好きなら目にしたことのある人も多いのではないだろうか。NANANINEはワーナーからメジャーデビューし、オリコンのインディーズチャートで1位を獲ったこともある。ALOHAも曽我部恵一主宰のROSE RECORDSからアルバムをリリースし話題になった。だがNANANINEは2006年に活動を休止。以降、ボーカルの川関浩司は表舞台から完全に姿を消していた。
川関浩司がいま歌う理由、そして「巻き込まれた」と語る西尾大介、Peach Peach Peachの結成秘話が満載のインタビュー、ぜひ読んでください。
文・インタビュー 高橋数菜
――最初にそれぞれパート名とお名前をいただいていいですか。
西尾大介(Vo, G, Sampler)「ボーカルとサンプラー、ギターも弾いてる西尾大介です」
川関浩司(Vo, G)「川関浩司。ボーカルと、ギターをたまに弾きます。こういうインタビューで2人でちゃんと話すの初めてじゃない?」
――マジですか、めっちゃ貴重ですね。まずお二人が組むようになった経緯をお聞きしたいんですけれど。
川関「もともと福岡のときの同級生といいますか、10代のときからの友達で。僕は前のバンド(NANANINE)が終わってからずっと音楽をやってなくて。ダイのほうは10年ちょい前ぐらいから東京に出てきてて。5~6年前ぐらいから2人で遊ぶ機会が増えて、ただ単に遊んでた(笑)。ノリは19才ぐらいのときと変わらない感じでいまだに遊べる友達みたいな。コロナ禍になったぐらいに、僕も久々に音楽をやる気になったみたいなのがあって、って感じかな、ざっくりいうと」
西尾「浩司は浩司で『なにかやりたい』『音楽を改めてやりたい』みたいなのをちょこちょこ言ってて。僕は機材とかあったりするんで『手伝えるよ』みたいなことを言ってたんだけど、じゃあとりあえず1曲やろうみたいな感じになって。自分たちがやってるイベントに浩司が出るってことにして、そこで強引に始まったというか、1曲とりあえずやろうみたいなのが始まりですね」
――強引にっていうのは、浩司さんは渋ってたんですか。
西尾「やるやるって言って、なんだかんだ始まんないじゃないですか。だからイベントがあったらやらざるを得ないだろう、みたいな感じですね」
――こないだ、2021年7月の1回目のイベントの配信を見返してたんです。そのときに思ったのが、大人になってからの友人の距離感じゃないな、子どもの頃、若いときからの友人の距離感だなっていうのをすごく感じて。
川関「間違いない。完全に間違いないですね」
――1回目の配信のときは、まだちょっとよそよそしさがあったんです。最近のライブを見てるとそういうのは全然思わないんですけど。
西尾「それはまだ一緒にやろうってなってなくて、とりあえず曲をつくろうということだったんで。改めてやろうってなったのは2021年の10月からなんですよ」
――そうなんですか。じゃあ7月の1回限りで終わってた可能性もある?
西尾「あるある、全然ある」
川関「確かに」
――恐ろしいです。
西尾「ははは(笑)。実際、僕はそのつもりだったというか、浩司がやるのを手伝うっていうので始まったので、そのつもりだったんです」
――西尾さんは1回きりの感じだったってことですか。
西尾「そう。だから僕はいちばん最初につくった曲(hear)では歌ってないんですよ。浩司が全部歌ってて」
――ほんとですね。
西尾「浩司が全部歌うっていうのでそのつもりでトラックをつくって始まった感じですね」
――僕はてっきり、西尾さんが浩司さんを引き込んだみたいな感じで見てたんですよ。浩司さん、全然歌わないじゃないですか。この十数年。
川関「そうです、十数年歌ってなかったです」
――だから、西尾さんが浩司さんを表に引っ張り出してきた形だと思ってたんですよ。
西尾「形的にはそうだよね」
川関「でもダイが巻き込まれたみたいな感じもあるよね」
西尾「最初から2人組でやろうとは思ってなかったです」
――めっちゃ意外です。
西尾「浩司がライブ再開できたらいいなとは思っていたんです。5~6曲つくれたらライブできるじゃないですか」
川関「でも俺は一緒にやりたいよって言って。そのほうが面白いし、1人でグイグイやってやろうみたいな感じはなくて。自分たちがカッコいいと思う音楽を一緒にやっていきたいっていう気持ちが強いかもしれないです」
西尾「『2人でやったほうが面白いじゃん』みたいな感じで言われたから、じゃあやるかっていう感じで。自分らがやってるOISAっていうイベントに出るよってなったときに、個人個人でやるよりもチーム組んで名前決めてやろうっていう話になったんです」
――それまではなにもやってなかったんですか?
西尾「浩司は数年ぶりのライブだった」
川関「そうだね」
――コロナ禍になって、ちょっと歌いたいなと。
川関「そうですね。ちょっとずつ歌いたい気持ちはあったですね」
西尾「そういうふうに一緒に飲んでるときとかちらちら言ってたんで」
川関「思うことも増えてきたみたいな感じもあると思います。人生いろいろ山や谷があって。音楽を辞める理由はあったんですけど、家族のことだったりっていうので辞めて。仕事のほうに専念してて。音楽をやりたいという気持ちもやる理由も長い間あんまりなくて。だんだん自分の中に思うことみたいなのが、世の中的なこともそうだし、個人的なこともそうだし、自分の人生のなかでとかもそうだし。音楽をやらない理由がなくなって、やる理由が増えてきたみたいな感じですかね」
――すごくいいですね。
川関「あははは、いやいや(笑)。だからって、別に歌詞でこういうことを歌いたいっていうことではちょっと違くて。僕は音楽は気分だと思ってるので、歌いたい気分みたいなことや自分がどういうふうに生きていきたいみたいなこと、自分たちの気分みたいなものを乗っけるものとして音楽があるなって。僕、リスナーとしてもすごい音楽ファンなんで、そういうふうに思いながら音楽も聴いてたし。ロックバンドやってましたけど、ヒップホップも好きだし、好きな音楽がどんどん加速していってるみたいなのがあって、そういう話をダイとも飲んでるときにしてて。なかなかそういう話をピタッとできる相手っていうのはいないっていうか、そういう意味でもウマが合うし、っていう感じですかね」
西尾「音楽の話もそうだし、政治の話とかもしたり、映画の話とか、あとくだらない話とか含めて、そういう話してた流れは絶対あるよね」
――また最初の話に戻るんですけど、浩司さんが音楽から完全に離れたと思ってたんですよ。
川関「離れてました」
――そうですよね。配信のお二人のトークのときに、音楽の話もするし、家でギターも弾くとおっしゃってて、すごいうれしかったんですよね。ギターも持っていないとか、完全に音楽と離れたって思ってたから。
川関「そうですね、音楽はずっと好きでした、当然。自分がやるとは思わなかっただけであって」
――伝えたいことができてきたって。
川関「そうですね、歌詞で伝えたいっていう気持ちはあんまりないんですけど。的確にこういうメッセージを送りたいみたいなのを歌詞できちんと理論立てて、みたいなことはまったく思わなくなりました」
――今回、7インチ(『KIDZ/EASY FLOW』)をリリースされたじゃないですか。その7インチの曲をもとにお話しさせていただければと思っています。『KIDZ』なんですけど、浩司さんの昔の歌詞って100伝えたいことを100言葉にしてたじゃないですか。
川関「そういう感じでした」
――今は相手の持っている気持ちをそのまま大事にしてほしいみたいな、昔のような剛速球のストレートではなくなったように聞こえました。
川関「なるほど。そういう感じに聞こえたんですね(笑)。昔はほんとにそう思ってました。自分が伝えたいことをどうパッキングするかみたいな感じで真面目にやってましたね(笑)。今は、ひとつのことを言い切らなくていいと思ってるんで、自分が持っているものだったり、どこか引っ掛かってることだったりとかが箇所箇所でちゃんと入れていければ、無理やり計算してやらなくても、それなりに生きてきたんで人間から出るものもあるかなっていうのもあるし。そういうほうが、その人それぞれにみたいな意味では、聴いてくれる人にとってはなにか1個でも引っ掛かればいいかなとか、別に答えが1つじゃないっていうふうに思ってるのもあるんで、音の響きを重視したりっていうほうが強いです。そのほうが自分も楽しく歌詞が書けるし、音楽をやることとか曲を歌うことに意味があると思ってるんで。ヒップホップに引っ張られていったおかげでそういうふうになったってのもあると思いますね」
――やっぱり長年歌詞を書かれてなかったっていうのもあると思うんですけど、NANANINE時代からPeach Peach Peachへの進化がものすごいですよね。
川関「進化というか、別と思ってやってるんで。音楽的にもまったく違うことをやってるので。そこもやっぱり今やりたいものをダイとやりたかった。まったく違うことをやりたいっていうのと同じように、歌詞に関しても全然違ったアプローチでスタートしたかったみたいなのがあったので、一直線上のところに僕はいなくて。僕は1回消えてたので、もう1回ゼロからスタートできるのはやりやすかったっていうのはあると思います」
――逆に、NANANINE時代にこういったラップ的な歌詞の乗せ方をやろうとか思ったことはありましたか。
川関「全然そういう思いがなかったですね。一生懸命バーッとやってたんで、そこまでいろいろ俯瞰で見る余裕もなかった気がします」
――『KIDZ』、曲は西尾さんで詞は浩司さんですか?
西尾「っていうわけではなくて、たとえばコードとかメロディーは2人でつくっていて」
川関「曲づくりは2人でやるんだけど、トラック制作というか、サウンドデザイン的なことはダイがやるという感じですかね」
――曲ができる過程を知りたくて。
川関「決まってないよね」
西尾「決まってないですね」
――『KIDZ』はどういった流れで?
川関「『KIDZ』は、僕らプレイリストで自分たちがいいと思う曲とか、こういうネタいいよねっていうのを集めて2人で共有してたんですね。こんな感じの曲やりたいねっていうところで、ダイが最初にビートをつくるところからスタート」
西尾「そうですね。リズムから、音を組み合わせるところから始めて。音でいうとキックとかそういうのではないことでビートをつくるっていう縛りをつけてて、それがある程度できたところで浩司がメロディーを乗っけて」
川関「で、こういうギター入れたらかっこいいよねってなって、その場でアイデア出しながら曲ができましたね。それも共通項の具体的な曲だったりとかアーティストだったり『これいいよね』ってお互いが見せ合ってるものがあるから、どっちかが出したらそれを理解できるみたいなものがあるかもしれないです。『そう来るんだったらこうだね』『こういう感じね』みたいな」
西尾「そうだね。『KIDZ』は特殊なつくり方した感じがするけど」
――ほかの曲では、西尾さんが歌詞を書いたりっていうのはあるんですか。
西尾「ほぼほぼないです。僕が適当に言ってるのをそれっぽい音にしてくれてたりすることはあるんですけど、基本的に僕は歌詞書いてないですね」
川関「でも面白いです。ダイがこう歌ったら面白いかなとか思いながらつくるのが面白い」
西尾「あと、そのときにすごい適当に歌った響きを結構大事にしてるんで。だから音のノリがいいっていうか、ビートのノリがいいですね」
――2021年10月のライブで初めて生のPeach Peach Peachを見たんですけど、そのときのMCでもう10曲ぐらいできてるって言ってたんですね。でも全然リリースされなくて。
川関・西尾「あははははははは!」
――で、『KIDZ』を聞いたら「これ時間かかるわ」ってすごい思ったんです。音のつくり込みがえげつないですよね。
西尾「ああ……頑張りましたね」
川関「でも、そこダイは結構速いですね、作業がめっちゃ速いです」
西尾「浩司寝てたもんね。俺めっちゃ覚えてる。疲れて浩司見たら寝てるから」
川関「ずっとやってるからもう寝よって。YouTube見たりしてます。俺的にはそれでネタを探してるの(笑)。ここはもう任せよ、みたいな」
西尾「何時間か完全に僕の作業タイムみたいなのができちゃうときもあるんですけど」
――最初の配信ライブでプレゼントした『hear』と『KIDZ』だと、音数はそんなに変わらないと思うんですけど、音の種類が『KIDZ』のほうが段違いに多いなと思ってて。
西尾「そうですね。重ね方がちょっと違いますね。空間ありきで『KIDZ』はつくってるんで。いまはそっちに振り切ってきてる感じもあります。『hear』はギターポップ寄りの曲だと思うんですけど、音の重ね方が違いますね」
川関「全然違うね、世界観ね」
――これって頭の中に西尾さんの正解の音が鳴ってるのか、それとも正解を捜しに行く作業なのか。
西尾「探しに行きながら、ある程度ここら辺だなっていうのはありますね。プレイリストを2人で共有して聞いて『これだね』みたいなのがあるんですけど、自分たちでバーッとやってたら関係なくなっちゃって、変なところに行ければいいなと思いながらつくってます。自分たちのやりたいようにやったら離れるんで、違うところに着地するんで、っていう感じですね」
――違うところに着地するのに速いんですね。
川関「速いよね。速いと俺は思う」
西尾「ああ、ほんと?」
川関「僕ら、2週間後にライブあるから新曲つくろうって言って、その間3日ぐらいしか日数ないから、この日にここまでやってみたいな感じで。プランニングはダイがするんですけど(笑)『じゃあ、あさってまでに歌詞』みたいな、いつもそんな感じです」
西尾「そう言われたら速いし、今回も7インチの裏に入ってる『EASY FLOW』も5月につくったばっかりなんで、そういった意味ではパッとつくれて、リリース前に演奏できるのは楽しいですね」
――曲がある程度たまってるじゃないですか。表に出すのはちょっと気が引けるみたいなのってあるんですか。
西尾「いやほんと……なんでなんだろう(笑)」
川関「なんでなんだろうね、マジで(笑)。なんなんだろう。ためらってる?」
西尾「ためらってるのかな。ただ前にどんどん進んでるだけなんですけどね」
川関「自分たちのつくった曲、それなりにいいと思ってるんだけど、もっとこうなりたいみたいな気持ちもあるよね。もっといい曲つくれるじゃないけど。曲的に、音楽的に曲つくって進化したいみたいなのがあるから。やっぱりリリースするとなると、それはそれなりに手間が掛かるというか、そこに注力しなきゃいけないから、そういう意味で次の曲づくりを優先してるかもね」
西尾「つくることを優先してきた感じですね、ここ1~2年。もうさすがにどうかなと思って、7インチも出していこうと思って(笑)。今年中に2~3枚出そうかなと思ってるんですよ。それをある程度出して、最終的にはLPを、12インチを出したいなと思ってます」
――すごくいいですね。
西尾「来年の早いうちに出したいなって感じですね。それまでにあと5~6曲ぐらいつくったら、多分ある程度のクオリティ高いアルバムができるはず」
川関「そうね。ファーストアルバムぐらいのものはもう終わってるから(笑)。よくあるインディーで最初に出すミニアルバムみたいなものはもう終わっちゃってるんです、僕らの中で。出さないまま終わっちゃってて(笑)。でも次の段階の最初のファーストアルバムみたいな感じのところまで来てるかもね」
――『KIDZ』だけでも配信してください。
西尾「YouTubeじゃ駄目ですかね」
――やっぱり配信で。SpotifyとかTikTokとか。
西尾「なるほど。そこら辺はなにか出さないとね」
川関「次の『KIDZ』をつくって、それでやろうか。それやったあとで『KIDZ』でもいいかもね」
西尾「そうですね。もう一個前に進みたいみたいなのがあるかもしれない」
――また元の話に戻るんですけど、僕が西尾さんを初めて見たのが浩司さんも出演されてた「ウタウタワナイト」ってイベントで。そこでアコギで弾き語りされてたので、アコギのフォーク歌手みたいな歌い方する人だなっていうふうに思ってたんですね。最初の配信もギターで弾き語りだったじゃないですか。そこでもフォーク歌手みたいな人だなって思ってて。今回インタビューさせていただくにあたって過去の作品を聴いたんですよ。そうしたら、最初から打ち込み使ってて、もともとはそういう人だったんだってびっくりして。
西尾「そうですね。もともとALOHA始めたときに1人だったんでそうせざるを得なかったっていうのもあるし。あとBeckとか好きだったんで、サンプラーとかを最初から取り入れてましたね」
――『TROPICAL COOL』から『うたのゆくえ』への進化がものすごいなって思ったんです。でも、『うたのゆくえ』からPeach Peach Peachへの進化もものすごいんですよ。どうやって今の音にたどり着いたのかなって。
西尾「『うたのゆくえ』からPeach Peach Peachまでは、□□□(クチロロ)の三浦康嗣さんの影響が大きいですね。三浦さんち行って一緒に作曲会みたいなのがあったりとか、つくってるのをいつも横で見てて。三浦さんに教えてもらった感じですね」
――『TROPICAL COOL』から『うたのゆくえ』への進化はROSE RECORDSで学んだことが大きいみたいな。
西尾「それは一緒にやってくれたSAKEROCKの野村(卓史)くんのパワーが強いですね」
――音を西尾さんがメインでつくられていると思うんですけど、Peach Peach Peachに関しては手くせを入れないようにしてるのかなというふうに思って。
西尾「そうですね。チャレンジしたいっていうのもあるので、ALOHAとはまた別の要素で行くとは決めてます。ALOHAって和っぽい感じもあるんで、和っぽいところを排除してますね」
川関「完全排除してる。やろうとしてることが日本ではないもんね」
西尾「そうですね。だから仮歌入れるときも、ほかのイメージで仮歌を入れてますね。僕らは仮歌をそのままほんとに形にしちゃうんで」
――西尾さんって、もともと歌詞を書かれるじゃないですか。歌詞を浩司さんに一任してるのは理由があるんですか。
西尾「僕は歌詞書くのがあんまり好きじゃなくて。いちばん不得意だなと思ってるんですよ。だから、歌詞書いてくれるのめっちゃありがたいなって感じ(笑)。だし、浩司が書く歌詞いいなと思うんで、完全に任せ切ってるっていう感じですね。いい感じにしてくれるんだろうなって信頼してるっていうか」
川関「おおー!」
西尾「(笑)中途半端に手を出さないほうがいいな、今は完全に任したほうがいいなと思ってます」
――歌詞の話に戻るんですけど、音から影響されて生まれるものが多いですか。
川関「完全にそうです。『この曲はこういうことを伝える』みたいなのはまったく思わないというか。まったくっていうと嘘になるんですけど(笑)」
西尾「にじんで出てくるでしょ、って思ってる」
川関「にじんで出てくると思ってやってるんで、大喜利だと思って歌詞書いてます」
――韻の踏み方とか要素の詰め込み方がすごくおしゃれというか巧みというか。
川関「でも、楽しんでやれるようにしてます。楽しんで書けるようにするっていうのが、自分がピーチ始めたときに歌詞書くときの最初に決めたことですね。ただ、ヒップホップ的なリズムと、韻を踏んでるじゃないですけど、みたいなところをやったことによって、自分のなかで言葉を入れていきながらゲームみたいにしてやるっていう。大喜利みたいな感じで、どんどん外枠外枠に行くみたいな。自分も知らない言葉が引き出される感じを大事にしつつ、あとはダイが歌ってる仮歌の言葉や響きにも合わせて、これがこう聞こえたら面白いかなっていうふうにアタックを大事にしたりしてやっていきながら、曲が向かっていった方向に最終的に落とし込んで面白くするじゃないですけど、大喜利です、人生大喜利だと思ってるんで」
――僕、昔ロッキング・オン・ジャパンにいたんですね。浩司さん何回もインタビュー受けられているからわかると思うんですけど、ロキノン的なインタビューって、この歌詞はこう思ってますよねとか、そういうインタビューじゃないですか。僕も歌詞からなにかを取ろうとしたんですけど「大喜利やん」って思って。
川関・西尾「あははははははは!」
――ここからなにかを取るのは無理だなと思ったんですね。今の大喜利っていう発言が「ですよね」って感じですね。
川関「タランティーノ的というか、カットアップしていくっていうか、ヒップホップ的。映画もそうだと思うんですけど、引用、引用、引用みたいなことで新しいことを表現したりとか、そこから面白い笑いが生まれるじゃないですけど」
西尾「ふざけてるんで」
川関「ふざけてます」
――『KIDZ』って最後Zじゃないですか。スラングで悪ガキとか子どもぶるっていう意味があるんですけど。
川関「へえ」
西尾「知らなかった」
――知らなかったんですか。なんとなくZですか。
川関「なんとなく」
西尾「なんとなく」
川関「そういうことありますね。なんとなくやったらそうなったりしますよね」
西尾「最初はSだった気がするけど、俺が途中で『Zにします』って(笑)」
川関「引っ掛かり増やしといたほうがいいかなみたいなところあるよね」
――なるほど。続いて『EASY FLOW』、これができたてほやほやの曲ですか。
川関「そのあと2曲できました」
西尾「この前月見ルでライブやったんですけど、そのときに新曲やりましたね」
――それは『EASY FLOW』とは違うタイプの曲ですか。
川関「またちょっと違うね」
西尾「うん。聴きます?」
――聴きたいです。
<しばし曲を聴く>
西尾「こんな感じです」
――いいですね。
西尾「おお、やった。よかった」
――すごくいいし、『EASY FLOW』と全然違いますね。『EASY FLOW』ができたてで、今のモードなのかなと思ってたんですけど、なんでも楽しいことやるっていう感じなんですね。
西尾「そうですね」
川関「でも、『EASY FLOW』の今の曲もさっきの聴いてもらった曲も、今の気分では全部です」
――すごい楽しそうですね。
川関「音楽を表現する上では楽しいよね、普通に」
西尾「いま、2人でつくればいいものをつくれるという確信めいたものがあるんで、本当にたくさん曲つくる時間をつくったほうがいいんだろうなって気がする」
川関「それが俺ららしいって気もするしね。あとは、表に出していく作業っていうことを今からどういうふうに頑張っていくか、ビジュアル的なことやコンセプト的なことをどういうふうに見せていくかっていうので、映像でそれをやっていくっていうのがいちばんわかりやすいと思ってるんで、って感じですかね」
――だからMVもすごい凝ったもので。
川関「そうですね。あれは一発目っていうのもあって、前々から僕がすごい好きだったっていうのもあってKohei Yonahaくんにお願いして。俺らが表に出すもののいちばん最初だったんで、ディレクターといっぱい話してつくりましたね。すごい気に入ってます。それが出せたんで、ここからはもうちょっとこまめに、簡単にでも出していく作業をやっていったほうが絶対いいよね、このSNS時代。みんな息を吸って吐くようにやってるわけだから、そこはその感覚で行ったほうがいいよね」
――全部の曲に言えることだと思うんですけど、みんなリラックスして聴ける感じの曲ですよね。チルい感じというか。
川関「そこはでもちょっと脱却したいかなと思ってるのも若干あります」
西尾「そういうのもあって、さっき聴いてもらったゴリゴリしたやつをつくってみたりした感はありますね」
――で、リラックスしてつくってる、余裕のあるオトナな感じなのかなと思ってたら、東京センチメンタル馬鹿野郎とのライブのときに西尾さんから「売れたいんですよ」って言われて、すごい意外で。
西尾「マジですか。めっちゃ売れたいですね」
――これはグループの総意で大丈夫ですか。
川関「ん…………あははははは! なんともいえない! グループの総意で売れたいっていうとちょっと違うけど」
西尾「売れたいっていうか、たとえばフェスに行ったりだとか、この前だと台湾のフェスに出たりだとか、そういう意味で売れたいって思ってます」
川関「そうだね。せっかく自分らが面白いと思ってる音楽をやってるんで、ちゃんと響くところに響きたいみたいな気持ちが強いっていうか。音楽的にやってることには自信があるから、ちゃんとそれ届けたいよね、っていう気持ちのほうが強いかな」
西尾「そうそう。あと、ある程度お金もかかるじゃないですか。やっぱりミックスするにしても外注したりして。それも回せるようになりたいっていうのが、やっぱり人気者になったらそれができるじゃないですか」
川関「ですね」
西尾「そこなんですよね。そういう意味で売れたいというか、ある程度回せるようになったらリリースもしやすくなるんですよね。いまそこで止まってたりするんですよね、ミックス作業で」
川関「確かに。ミックスね、大事だもんね」
西尾「大事。僕がやってもいいんですけど、時間がめちゃかかり過ぎたりとか、あまりうまいと思ってなくて自分で。だからほかの人に託したいなってのはあるんですよね」
川関「ちょっと第三者的なものがあるとより良くなるっていうのはあるかもしれないよね」
――この人にお願いしてみたいなとかってあるんですか。
西尾「僕は、前回キッシー(岸本浩幸)っていう人に頼んだんですけど、キッシーにやってもらうのがいちばんいいなと思ってますね」
川関「キッシーさんはすごい良かったですね。1曲だけなんですよ、ちゃんとミックスお願いしてやってもらった曲っていうのが『KIDZ』だけで。自分たちもミックス上がってきて、自分たちの曲に対する理解度が増したりとか、自分たちの曲ってだけじゃなくて、自分たちってものをどう仕上げたらいいのかとかよく見えたんで、それはすげえでかかったと思います」
西尾「いい感じで提示してくれた感じはあったよね」
川関「良かったね、ほんとに」
西尾「そういうのがあるんで、そこをクリアしないといけないんだよね。そこが立ちはだかってるんですよ」
川関「はだかってるね、マジで」
――お金ですか。
川関「お金ですね」
西尾「お金です」
――物販やりましょう。
西尾「『EASY FLOW』に関しては自分がやったんですけど、そんな感じで7インチは出していこうと思ったんですね。12インチ出すときはちょっと投げたいなって感じですね」
――ぜひ売れてお金いっぱい稼いでつくってください。
西尾「ほんとそうなんですよ」
川関「売れたいっていう、グループの総意ではないです(笑)」
西尾「売れたいっていうか、活動しやすくなりたい。思ったとおりの活動をできるようになりたい。不自由がちょっといま多すぎる」
――まとめに入ろうとしてるんですけど、表に出てきてくれて、ほんとにありがとうございます。
川関・西尾「はははははははは!」
川関「どんなまとめですか(爆笑)」
――全然歌わないですもん。
川関「そうですね。相方のおかげで出てきましたんで」
――昔、ブログやられてたじゃないですか。それの最後にモンブランって人たちと一緒にやってますみたいなこと書いてて、一緒になにかやるのかなって思ってたんです。
川関「やろうとしてました。ちょっとやってました」
西尾「『やればいいやん』って、俺も言った覚えがある」
川関「それでやめました、また」
――そうなんですね。でも、ほんと表に出てきてくれて。
川関「あはははは! ありがとうございます、こちらこそ」
――売れる売れないじゃないですけど、まずPeach Peach Peachっていう存在が知られてない。だから、ちょっとでも知ってもらえたらいいなっていう。
西尾「ほんとにお願いします。音楽はほんといいのできてるんで、届け方だったりとか見せ方だったりとか、そういう段階に来てるなっていうのはあります」
川関「まさにそれだね。いつもそれ考えてます、最近。毎日歩いてるときとかそこ考えながらっていうか。よく移動中YouTube見たりとか、なにか見たり聞いたりしてるじゃないですか。やっぱりそういうこと考えるよね。自分たちのどこに光を当てるか、みたいなことはいま大事ですね。どういうふうに見せるかっていうところは頑張ろうと思ってます」
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「38歳未勝利戦」~not in service birthday SPECIAL~
2023年9月8日(金)東京 恵比寿 BATICA
<出演者>
ポッシブルゆうや/Peach Peach Peach/not in service/tomad(maltine records)/futatsuki(TREKKIE TRAX)/lIlI(DJ set)/in the pool/D’s crew/has/skmt(out of date)/YONEDA/sgwr/コマシちゃん
「nanakai-lobby vol.2 〜初秋のアーベイン・パーティ〜」
2023年9月20日(水)東京 有楽町I’M A SHOW
<出演者>
DJ:三浦康嗣 (□□□)/木村勝好/西尾大介
LIVE:Peach Peach Peach