相対性理論にとって初のライブアルバム。ライブ映像にしてもライブ音源にしてもこれまで商品として発売されたものがなかった、いわば神秘のベールに包まれた相対性理論という存在の肉体的な部分に迫ることができる作品となっている。まず驚くのは、やくしまるえつこの息遣いの生々しさ。スタジオ音源では消されてしまうような、もしくは修正されてしまうような些細な動作、震え、あるいは揺らぎのようなものですらがこのライブ作品には十分すぎるほどに収められている。
私たちはやくしまるえつこを、神秘的な、実在すらしえない存在ではないかと思うときがあるが、このライブアルバムには人間・やくしまるえつこが確かに存在する。
それだけでなく、肉体をどのように使って声を出しているか、どの筋肉をどの程度使って声を出しているか、どこの筋肉の力を抜いているかといった情報すらも聴きとることができる。この素晴らしい録音技術はボーカルだけでなく、ドラム、ベース、ギターの所作すらも完璧に感じられるほどだ。どの程度の腕の振りの速さでドラムを鳴らしているか、どのくらいの速度のスナップで弦を鳴らしているかすらわかるほどに。これまでこういった作品を一切リリースしてこなかった彼女たちが、これほどまでに生々しい作品を発表してくれたことに敬意を表したい。
さらにいえば、本アルバムの収録曲が公開されたときには、「もっとほかに入れるべき曲があるだろう」と思っていたのだが、このアルバムの完成度を聴くと、そんなことは些末すぎる問題に思えてしまった。
/ 2019/07/26